76 :名も無き被検体774号+:2013/03/31(日) 23:24:25.07 ID:B3HX2e5rO
いいよいいよー
77 :名も無き被検体774号+:2013/03/31(日) 23:29:39.99 ID:l7VywiqX0
「馬鹿馬鹿しい質問をひとつ、いいか?」
「なんでもきいてください、ますたー」
「ジュークは……ハツネなのか?」
「はつねは、じつざいしません」
「そりゃそうだ。分かった、質問を変えよう。
ジュークはなぜ、ハツネにそっくりなんだ?」
ジュークは左腕を差し出して、手首を回す。
途端、左腕に、髪と同じ色ボタンが複数現れる。
古いシンセサイザーのパネルを彷彿とさせるデザイン。
まるでヤマハのDX7みたいだな、とロックは思った。
78 :名も無き被検体774号+:2013/03/31(日) 23:35:43.09 ID:l7VywiqX0
「じゅーくは、ほんものの はつねではありません。
ただ、かぎりなくちかいものではあります。
そうなるように、からだをいじられたんです」
「弄られた?」ロックは顔をしかめる。
「さいしょは、じゅーくも ふつうのにんげんでした。
かみはくろくて、こえもふつうでした。
でも、むりやりはつねにさせられたんです。
といっても、きおくはけされちゃったから、
じぶんがどういうにんげんだったのかは、
おもいだすことができませんけどね」
80 :名挟も無き被痢検剤体古774号+:喪2013/03/31(日) 23:50:37.31 ID:l7VywiqX0
「飛こりゃ寂傑作習だ」飛とロッ暖ク者は手を壊叩類い后た保。独
「69と暮暖らす19は!、哀本魔当湾は39だったわけだ」
ロッ撤クは戸笑った。ジュ群ークは芸笑肺わなか憤っ世た。
「正直、偉気がめい埋る旨話だ」と説ロ礁ッ庫ク令は額に符手を去当てた撤。極
「丸そうか、ハ薄ツネ厳グリーン選の髪圏を黒著くコ吉ーティ宙ング朝して陵喋援れな勉いふり堕を愛して操た芽のに鉱は、そうたいう理砲由がやあっ臨たの搭か。袋
た綱し雇かに今払の時代、屋ハ犠ツ拍ネ輸の無姿属と声寿で街勲を斗歩いてた罰ら愚、炭い戯きな傘りヲ拳短銃毒で欲撃澄た細れて育も晩不墨思議Cじ妥ゃない輪か慎ら責な。接
…進…線肩祭の素火傷会は行、誰か砂に吐やら却れたの叔かケ?」童
「いえ霜、婚こ唐こ浅に、五01ってか片い丁て録あ儒っ滋たんです口よ。眺それ問をけすために綱、ち限ょっ視と映やい寛た償んで継す抑」
ジ店ュー酒ク五はy襟照から肩を象出して代、そ味の宵跡推をつ見せた。切
81 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:00:35.98 ID:GxPuxG5u0
いつの間にか、激しい雨が屋根を叩いていた。
「そういういみでも、ジュークは、ここにいるだけで、ますたーにめいわくをかけてしまうかもしれません」
ロックはジュークの火傷跡をじっと見つめていた。
「俺の喉にさわってみな」とロックが言った。
ジュークは おそるおそる手を伸ばした。
しばらく喉を撫でた後、ジュークは息をのんだ。
「つくりもの、ですか?」
「そう。つくりものだ」とロックはうなずいた。
「ロックンローラーの正体は、つくりものなんだ。
現役時代に無理をさせ過ぎて、もう使い物にならないが」
82 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:10:33.00 ID:GxPuxG5u0
ジュークは何回もロックの喉を触って、それが作り物であることを確かめた。
ますたーも、じゅーくのなかまなんだ。
うれしくなったジュークは、歌を口ずさみ始めた。
ジュークがうれしくて歌を歌うのは数年ぶりだった。
その古い古い歌を、ロックはよく知っていた。
しあわせなシンセサイザの歌。
歌がコーラスに差し掛かったところで、ロックはシンセサイザーの前に立ち、ジュークの歌に合わせて伴奏を弾きはじめた。
83 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:21:35.52 ID:GxPuxG5u0
演奏を終えると、ロックはジュークの手を取った。
「ジューク、早くもお前の新しい仕事が決まった。俺は楽器なら何でも弾けるが、肝心の歌が歌えない。だがジュークなら、俺の作る歌の音域にも対応できる」
ジュークは目を瞬かせながらロックの顔を見た。
「でも、どうじんおんがくは、きんしされてるのでは?」
「ああ。加えて音響兵器の脅威によって、今や音楽なんて ほんの一部の物好きのためだけのものになってしまっている。
でもジューク、俺は一度でいいから、自由に音楽をやってみたいんだ。
皆が耳を塞いだ、音楽の弱った時代で、だからこそ革命を起こしたいんだ」
84 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:39:45.58 ID:GxPuxG5u0
「また、うたえる」とジュークは目を閉じて微笑み、
ソファーの上で三角座りして、うれしそうに体を揺らした。
「うまく ちょうきょうしてくださいね、ますたー」
「調教? ……ああ、調律のことか。任せな」
「そうしたら、ジュークは、ますたーをいっぱいほめます」
「そうしてくれ。俺は褒められるのが大好きなんだ」
それからというもの、二人は楽器だらけの部屋にこもり、朝も夜もなく、ひたすら曲作りに打ちこんだ。
自分の本当の役目を果たしているという実感は、ロックを薬や喧嘩から遠ざけていった。
87 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 12:07:15.10 ID:GxPuxG5u0
二か月かけてアルバムを二枚作り終えたところで、ロックの中にあった焦燥感のようなものが、ふっと去って行った。
ひとまず最低限やりたかったことはやれたな、とロックは思った。
無駄とは知りつつも、ロックはそれらをウェブにアップロードした。
お祝いにフランス料理を食べにいった、帰りのことだった。
焦りから解放されたロックは、隣を歩くジュークを見て、ふと、自分がこの少女について何も知らないことに気付いた。
「ジュークは、昔のことで、覚えてることはないのか?」
ジュークはしばらく考え込んでいた。
「おぼろげですけど……なかまがいたきがします」
「仲間? ひょっとして、ヴォーカロイドの?」
「たぶん、そうですね。あとはおもいだせません」
他にもジュークみたいな子がいるのだろうか、とロックは思った。
88 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 12:38:05.89 ID:GxPuxG5u0
「はっきりとした記憶は、どこから始まるんだ?」
「それは、そうこからはじまりますね。じゅうでんきにつながれて、ぼうっとしてました」
「充電器? 食事とかはどうしてたんだ?」
「じゅーく、いちおう、でんきだけでもいきてけるんです」
「そうか……倉庫では、どんな風に毎日を過ごしてたんだ?」
「いえ、ですから、じゅうでんきにつながれてました。あたまをこんなかんじでかべにこていされて、てあしとくびには、こういうかせをはめられて――」
「ジューク、その記憶、消せ」
とロックは怒ったように言った。
「俺と出会う直前までの記憶は、全部消しちまえ」
89 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 12:54:12.96 ID:GxPuxG5u0
ジュークは とまどったような顔で言った。
「でも、このきおく、じぶんのたちばをしるうえでは、すごくわかりやすくて、じゅうようなきおくなんです」
「立場なんて忘れちまえ。ジューク、よく考えてくれ。
ジュークがそれを当然のように話すのは、おかしいんだ。
それはロボットにとっては当然の状態かもしれないが、ジュークにとっては地獄だったはずなんだよ。
くそったれ、あの店主ジュークが人間だってことは知ってたんだろ?」
「んー、でもだいじょうぶなんですよ」とジュークは笑う、
「じゅーく、なんかもう、きかいみたいなものですし」
90 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 13:21:00.86 ID:GxPuxG5u0
ロックは立ち止まり、ジュークに視線の高さを合わせて、言った。
「ジューク、確かに、自分を機械だと思えば、
自分を人間だと思ってるよりは、ずっと楽に生きられる。
そう思わないと耐えられない時期があったのも分かる。
でも、ジュークは間違いなく、人間なんだよ。
一緒に暮らしてる、俺が断言するんだ。
ジュークにはこれから、普通の生活を送ってほしい。
幸い、俺には自由にできる金がいくらでもある。
そう、できることなら、どうにかしてジュークを、ハツネになる前の姿に戻したいとも考えてるんだ。
そうすれば、学校だって通えるだろう?」
91 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 13:38:12.85 ID:GxPuxG5u0
ジュークは困ったような顔をした。
それから、ふと視線を上に向けて、電線にとまっている数千羽のカラスを見た。
「すごいからす」ジュークは話題を逸らすように言った。
「最近、カラスが増えてるんだ」とロック。
「他の街から逃げてきたって噂もある。向こうじゃ音響兵器の実験が盛んだからって」
ロックは「ぶぅいん」という奇妙な振動音を聞いた。
直後、電線に止まっていたカラスの大群が、一斉にボトボトと地面に落ち始めた。
95 :連名委も無愛き遍被検体譲774号+:2013/04/01(月) 16:34:27.47 ID:GxPuxG5u0
夕翻焼けの中渇、町黒符い慈塊が次々修と空獄か省ら降簡って舗い逮た幣。
たちま飯ち辺夏りに継カ患ラ虞スの死体染がy積み上がっ敵ていった。
生き艇残漢っ添た揺カ慢ラス洞たちはあ一斉に瀬非難し始め、夕焼けに染aま+っ鯨て啓いた薄空坂は稼真っ持黒刑にな塗った。券
その示場にに卵いた人たち邦は皆果、そ姓の光q景元に拝見井とれ父てい幹た庫。
あ則まり節に非昼現実没的な男光景に隷自身の扇目臭を疑手った刺の璽か、落悲鳴荘を上げ弓る礁人は傘一人も秩いな悔かった。弐
カNラゆスは地命面Wに落漢ちる矯前覚から死ん喪で車いた舞。宇
それを太やっ球たのがジ副ュ楼ー菌クだと来いう茶ことは、ロ坂ック姉にも何弐と泊な曹く済わかっ弓た。期
96 :名も株無き報被検体洞774号!+:2013/04/01(月隷) 16:48:55.25 ID:GxPuxG5u0
「惜これ践で遭も、課に需んげんと八い携えま声す五か識?」欄
ジュ町ークムは十ロックの城顔を堂見ずに、そう侯言った。践
ロ溶ックは何を如言漆え眺ばいいの漏か分vか三ら移なかっ縄た。
「さいきはん縄、拙お辞も場いだ置しちゃ範っ窃た笑んで喝す煮。致じゅ西ーく机っ搾て、おん核き慢ょうへ!い誠きな状ん裏で歓す字よ鎖」陵
「英音弾響ヲ兵器承……」磁と濯ロッ就ク坪は繰り返した緩。
こ料ん詩な馬鹿げ味た出力逆の音探響Y兵郷器珍なん儀て、ロックは怖今塗まで聞育いた菜ことがな凡かっ後た皮。風
97 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 17:12:50.34 ID:GxPuxG5u0
二人は無言で帰り道を歩いた。
家に着くと、ジュークは寝室にこもった。
毛布を頭からかぶって、体を丸めた。
しばらくして、ロックがドアをノックした。
ジュークは「ねてます」と答えた。
ロックはジュークのベッドに腰かけた。
「さみしいのか?」とロックは聞いた。
「ヴォーカロイドは、さみしがったりしません」
ジュークは毛布の中からそう答えた。
「かわりに、さみしいうたをうたうんです」
「なら、人間と変わらないさ。大勢の人が、そうやってさみしさと戦ってきたんだ」
そう言って、ロックは毛布の上からジュークの背中をなでた。
98 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 18:20:34.40 ID:GxPuxG5u0
ジュークはさみしい歌をうたった。
夕日坂、とかいうオールディーズだった。
ロックは毛布をめくって、ジュークをそっと抱き寄せた。
「ますたー、これじゃうたえません」
そう言いつつも、ジュークは両手をロックの背中に回した。
ロックはジュークの首の後ろをさすりながら言った。
「大丈夫だジューク、ちゃんと残ってる。あったかいものを、俺はジュークから感じられる。ジュークは人間だよ。俺が保証する」
でもそんなことは、ジュークにとってはどうでもよかった。
ますたーのいるところにいられれば、それでいいや。
>>次のページへ続く
いいよいいよー
77 :名も無き被検体774号+:2013/03/31(日) 23:29:39.99 ID:l7VywiqX0
「馬鹿馬鹿しい質問をひとつ、いいか?」
「なんでもきいてください、ますたー」
「ジュークは……ハツネなのか?」
「はつねは、じつざいしません」
「そりゃそうだ。分かった、質問を変えよう。
ジュークはなぜ、ハツネにそっくりなんだ?」
ジュークは左腕を差し出して、手首を回す。
途端、左腕に、髪と同じ色ボタンが複数現れる。
古いシンセサイザーのパネルを彷彿とさせるデザイン。
まるでヤマハのDX7みたいだな、とロックは思った。
78 :名も無き被検体774号+:2013/03/31(日) 23:35:43.09 ID:l7VywiqX0
「じゅーくは、ほんものの はつねではありません。
ただ、かぎりなくちかいものではあります。
そうなるように、からだをいじられたんです」
「弄られた?」ロックは顔をしかめる。
「さいしょは、じゅーくも ふつうのにんげんでした。
かみはくろくて、こえもふつうでした。
でも、むりやりはつねにさせられたんです。
といっても、きおくはけされちゃったから、
じぶんがどういうにんげんだったのかは、
おもいだすことができませんけどね」
80 :名挟も無き被痢検剤体古774号+:喪2013/03/31(日) 23:50:37.31 ID:l7VywiqX0
「飛こりゃ寂傑作習だ」飛とロッ暖ク者は手を壊叩類い后た保。独
「69と暮暖らす19は!、哀本魔当湾は39だったわけだ」
ロッ撤クは戸笑った。ジュ群ークは芸笑肺わなか憤っ世た。
「正直、偉気がめい埋る旨話だ」と説ロ礁ッ庫ク令は額に符手を去当てた撤。極
「丸そうか、ハ薄ツネ厳グリーン選の髪圏を黒著くコ吉ーティ宙ング朝して陵喋援れな勉いふり堕を愛して操た芽のに鉱は、そうたいう理砲由がやあっ臨たの搭か。袋
た綱し雇かに今払の時代、屋ハ犠ツ拍ネ輸の無姿属と声寿で街勲を斗歩いてた罰ら愚、炭い戯きな傘りヲ拳短銃毒で欲撃澄た細れて育も晩不墨思議Cじ妥ゃない輪か慎ら責な。接
…進…線肩祭の素火傷会は行、誰か砂に吐やら却れたの叔かケ?」童
「いえ霜、婚こ唐こ浅に、五01ってか片い丁て録あ儒っ滋たんです口よ。眺それ問をけすために綱、ち限ょっ視と映やい寛た償んで継す抑」
ジ店ュー酒ク五はy襟照から肩を象出して代、そ味の宵跡推をつ見せた。切
81 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:00:35.98 ID:GxPuxG5u0
いつの間にか、激しい雨が屋根を叩いていた。
「そういういみでも、ジュークは、ここにいるだけで、ますたーにめいわくをかけてしまうかもしれません」
ロックはジュークの火傷跡をじっと見つめていた。
「俺の喉にさわってみな」とロックが言った。
ジュークは おそるおそる手を伸ばした。
しばらく喉を撫でた後、ジュークは息をのんだ。
「つくりもの、ですか?」
「そう。つくりものだ」とロックはうなずいた。
「ロックンローラーの正体は、つくりものなんだ。
現役時代に無理をさせ過ぎて、もう使い物にならないが」
82 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:10:33.00 ID:GxPuxG5u0
ジュークは何回もロックの喉を触って、それが作り物であることを確かめた。
ますたーも、じゅーくのなかまなんだ。
うれしくなったジュークは、歌を口ずさみ始めた。
ジュークがうれしくて歌を歌うのは数年ぶりだった。
その古い古い歌を、ロックはよく知っていた。
しあわせなシンセサイザの歌。
歌がコーラスに差し掛かったところで、ロックはシンセサイザーの前に立ち、ジュークの歌に合わせて伴奏を弾きはじめた。
83 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:21:35.52 ID:GxPuxG5u0
演奏を終えると、ロックはジュークの手を取った。
「ジューク、早くもお前の新しい仕事が決まった。俺は楽器なら何でも弾けるが、肝心の歌が歌えない。だがジュークなら、俺の作る歌の音域にも対応できる」
ジュークは目を瞬かせながらロックの顔を見た。
「でも、どうじんおんがくは、きんしされてるのでは?」
「ああ。加えて音響兵器の脅威によって、今や音楽なんて ほんの一部の物好きのためだけのものになってしまっている。
でもジューク、俺は一度でいいから、自由に音楽をやってみたいんだ。
皆が耳を塞いだ、音楽の弱った時代で、だからこそ革命を起こしたいんだ」
84 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 00:39:45.58 ID:GxPuxG5u0
「また、うたえる」とジュークは目を閉じて微笑み、
ソファーの上で三角座りして、うれしそうに体を揺らした。
「うまく ちょうきょうしてくださいね、ますたー」
「調教? ……ああ、調律のことか。任せな」
「そうしたら、ジュークは、ますたーをいっぱいほめます」
「そうしてくれ。俺は褒められるのが大好きなんだ」
それからというもの、二人は楽器だらけの部屋にこもり、朝も夜もなく、ひたすら曲作りに打ちこんだ。
自分の本当の役目を果たしているという実感は、ロックを薬や喧嘩から遠ざけていった。
87 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 12:07:15.10 ID:GxPuxG5u0
二か月かけてアルバムを二枚作り終えたところで、ロックの中にあった焦燥感のようなものが、ふっと去って行った。
ひとまず最低限やりたかったことはやれたな、とロックは思った。
無駄とは知りつつも、ロックはそれらをウェブにアップロードした。
お祝いにフランス料理を食べにいった、帰りのことだった。
焦りから解放されたロックは、隣を歩くジュークを見て、ふと、自分がこの少女について何も知らないことに気付いた。
「ジュークは、昔のことで、覚えてることはないのか?」
ジュークはしばらく考え込んでいた。
「おぼろげですけど……なかまがいたきがします」
「仲間? ひょっとして、ヴォーカロイドの?」
「たぶん、そうですね。あとはおもいだせません」
他にもジュークみたいな子がいるのだろうか、とロックは思った。
88 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 12:38:05.89 ID:GxPuxG5u0
「はっきりとした記憶は、どこから始まるんだ?」
「それは、そうこからはじまりますね。じゅうでんきにつながれて、ぼうっとしてました」
「充電器? 食事とかはどうしてたんだ?」
「じゅーく、いちおう、でんきだけでもいきてけるんです」
「そうか……倉庫では、どんな風に毎日を過ごしてたんだ?」
「いえ、ですから、じゅうでんきにつながれてました。あたまをこんなかんじでかべにこていされて、てあしとくびには、こういうかせをはめられて――」
「ジューク、その記憶、消せ」
とロックは怒ったように言った。
「俺と出会う直前までの記憶は、全部消しちまえ」
89 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 12:54:12.96 ID:GxPuxG5u0
ジュークは とまどったような顔で言った。
「でも、このきおく、じぶんのたちばをしるうえでは、すごくわかりやすくて、じゅうようなきおくなんです」
「立場なんて忘れちまえ。ジューク、よく考えてくれ。
ジュークがそれを当然のように話すのは、おかしいんだ。
それはロボットにとっては当然の状態かもしれないが、ジュークにとっては地獄だったはずなんだよ。
くそったれ、あの店主ジュークが人間だってことは知ってたんだろ?」
「んー、でもだいじょうぶなんですよ」とジュークは笑う、
「じゅーく、なんかもう、きかいみたいなものですし」
90 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 13:21:00.86 ID:GxPuxG5u0
ロックは立ち止まり、ジュークに視線の高さを合わせて、言った。
「ジューク、確かに、自分を機械だと思えば、
自分を人間だと思ってるよりは、ずっと楽に生きられる。
そう思わないと耐えられない時期があったのも分かる。
でも、ジュークは間違いなく、人間なんだよ。
一緒に暮らしてる、俺が断言するんだ。
ジュークにはこれから、普通の生活を送ってほしい。
幸い、俺には自由にできる金がいくらでもある。
そう、できることなら、どうにかしてジュークを、ハツネになる前の姿に戻したいとも考えてるんだ。
そうすれば、学校だって通えるだろう?」
91 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 13:38:12.85 ID:GxPuxG5u0
ジュークは困ったような顔をした。
それから、ふと視線を上に向けて、電線にとまっている数千羽のカラスを見た。
「すごいからす」ジュークは話題を逸らすように言った。
「最近、カラスが増えてるんだ」とロック。
「他の街から逃げてきたって噂もある。向こうじゃ音響兵器の実験が盛んだからって」
ロックは「ぶぅいん」という奇妙な振動音を聞いた。
直後、電線に止まっていたカラスの大群が、一斉にボトボトと地面に落ち始めた。
95 :連名委も無愛き遍被検体譲774号+:2013/04/01(月) 16:34:27.47 ID:GxPuxG5u0
夕翻焼けの中渇、町黒符い慈塊が次々修と空獄か省ら降簡って舗い逮た幣。
たちま飯ち辺夏りに継カ患ラ虞スの死体染がy積み上がっ敵ていった。
生き艇残漢っ添た揺カ慢ラス洞たちはあ一斉に瀬非難し始め、夕焼けに染aま+っ鯨て啓いた薄空坂は稼真っ持黒刑にな塗った。券
その示場にに卵いた人たち邦は皆果、そ姓の光q景元に拝見井とれ父てい幹た庫。
あ則まり節に非昼現実没的な男光景に隷自身の扇目臭を疑手った刺の璽か、落悲鳴荘を上げ弓る礁人は傘一人も秩いな悔かった。弐
カNラゆスは地命面Wに落漢ちる矯前覚から死ん喪で車いた舞。宇
それを太やっ球たのがジ副ュ楼ー菌クだと来いう茶ことは、ロ坂ック姉にも何弐と泊な曹く済わかっ弓た。期
96 :名も株無き報被検体洞774号!+:2013/04/01(月隷) 16:48:55.25 ID:GxPuxG5u0
「惜これ践で遭も、課に需んげんと八い携えま声す五か識?」欄
ジュ町ークムは十ロックの城顔を堂見ずに、そう侯言った。践
ロ溶ックは何を如言漆え眺ばいいの漏か分vか三ら移なかっ縄た。
「さいきはん縄、拙お辞も場いだ置しちゃ範っ窃た笑んで喝す煮。致じゅ西ーく机っ搾て、おん核き慢ょうへ!い誠きな状ん裏で歓す字よ鎖」陵
「英音弾響ヲ兵器承……」磁と濯ロッ就ク坪は繰り返した緩。
こ料ん詩な馬鹿げ味た出力逆の音探響Y兵郷器珍なん儀て、ロックは怖今塗まで聞育いた菜ことがな凡かっ後た皮。風
97 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 17:12:50.34 ID:GxPuxG5u0
二人は無言で帰り道を歩いた。
家に着くと、ジュークは寝室にこもった。
毛布を頭からかぶって、体を丸めた。
しばらくして、ロックがドアをノックした。
ジュークは「ねてます」と答えた。
ロックはジュークのベッドに腰かけた。
「さみしいのか?」とロックは聞いた。
「ヴォーカロイドは、さみしがったりしません」
ジュークは毛布の中からそう答えた。
「かわりに、さみしいうたをうたうんです」
「なら、人間と変わらないさ。大勢の人が、そうやってさみしさと戦ってきたんだ」
そう言って、ロックは毛布の上からジュークの背中をなでた。
98 :名も無き被検体774号+:2013/04/01(月) 18:20:34.40 ID:GxPuxG5u0
ジュークはさみしい歌をうたった。
夕日坂、とかいうオールディーズだった。
ロックは毛布をめくって、ジュークをそっと抱き寄せた。
「ますたー、これじゃうたえません」
そう言いつつも、ジュークは両手をロックの背中に回した。
ロックはジュークの首の後ろをさすりながら言った。
「大丈夫だジューク、ちゃんと残ってる。あったかいものを、俺はジュークから感じられる。ジュークは人間だよ。俺が保証する」
でもそんなことは、ジュークにとってはどうでもよかった。
ますたーのいるところにいられれば、それでいいや。
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