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15年片想いしてた人に別れを告げてきた
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45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 00:55:20.23 ID:vbuqeZbH.net
彼女は単に、藤森くんのことは好きでも嫌いでもないけど。そんなニュアンスを込めてのものかもしれない。それでも、俺はこの言葉がどれほど嬉しかったか。


周りは当然、その言葉を聞いて一斉にはしゃぎ出す。クラスメートはやべーとかまじかよーとか、今まで以上ににやにやとしながら俺たちを交互に見つめてくる。


翼は、そんなのお構い無しに「ほら、いこ?」と黒板の落書きを消して席に向かった。

びくびくしながら、俺もその後を追って席についた。


でもこの瞬間から、俺は自分の気持ちを彼女に伝えることを諦めた。

彼女が俺に好意を抱いていようといなかろうと、ここで俺が気持ちを伝えてしまったら、それこそクラスメートの冷やかしの対象になる。そう思ったからだ。

結局は保身優先で、ちゃんと自分に向き合わなかった不甲斐ない結果が今に繋がってる。



47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:05:11.67 ID:vbuqeZbH.net
なんとも馬鹿げた話だけど、俺はその日を境に少しずつ翼と距離を置くようになった。

本当は楽しく会話したいのに、周りが俺たちのやりとりに注目してるかもしれない。

そんなことを思うと、彼女への返事もぎこちなくどこか冷たいものになってしまった。


最初こそはいつものように話しかけてくれた彼女が、次第に話しかけてこなくなった。

今までは別々に登校することがあれば真っ先に挨拶をしてくれていたのに、それすらなくなった。

別に関係が悪化していたわけではないと思う。

そう信じたい。


朝、一緒に登校する時。その時だけは、誰にも見られていない安心感から、俺たちは普通に会話をしていた。

登校班が同じとは言え、時間帯によって2班に別れることも少なくない。

教室での彼女の挨拶やテレビの話を聞かなくなった代わりに、登校が一緒になった時は足枷が解けたように彼女はよく喋っていた。


クラスメートの目を気にしながらこそこそと会話する。

今思えばどれだけ情けないんだろう。もっと堂々とすればよかった。どうして彼女を避けるようになってしまったんだろう。




48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:14:17.65 ID:vbuqeZbH.net
そうして、進展どころか退行してしまった3年生は、微妙な空気を漂わせたまま終わりを迎えた。

4年も引き続き同じクラスだったが、翼と面と向かって会話をするのは朝の登校の時くらいになった。

死ぬほど苦しかった。本当は毎日でも、片時でも離れたくないのに、教室では遠くから彼女を見つめるくらいで、自分から話しかけることはほとんどなかった。


もともと翼は活発で、誰とでも仲良くできる人。俺と会話することがなくなっても、翼は毎日楽しそうだった。

たまにふと目が合うときに微笑んでくれる以外では、彼女から俺に話しかけることもほとんどなくて、そうしてつまらない日々を送っていた。


そんな俺の日々に、ある日小さな異変が起きた。

俺に直接的なダメージはないけれど、クラスの数名の男子が翼に惚れている噂が流れ始めた。


その噂の対象に俺の名前はなく、いつの間にか俺と翼の関係を冷やかす人間は誰もいなくなっていた。

それと同時に、俺は翼と今までのような一番近い異性としての関係に戻れないこともなんとなく悟っていた。







49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:24:37.91 ID:vbuqeZbH.net
それからのことは、よくわからない。

何人かが翼に告白をしたらしいが、彼女は顔を真っ赤にするばかりで自分の気持ちを誰にも話すことはなかったようだった。


つまりみんなフラれたのだ。

俺は影で小さくガッツポーズをしていた。

自分から告白する勇気もないくせに、勇気をもって告白した男子がフラれるのが嬉しくて仕方なかった。

「私また告白されたんだー」

朝、登校の時に彼女はそんなことをよく俺に話していた。

俺はただ、そうなんだと相討ちを打つことしかできなくて、何て返事をしたのかも、翼に好きな人がいるのかも知らないまま時間だけが過ぎていった。

「藤森くんは、誰が好きなの?」

一度だけ聞かれたことがあったが、その時は、「教えられない」となんとも情けない返事をした記憶がある。

それから6年生になって、活発だった彼女もおしとやかで大人しい女の子へと変わっていった。

気づけば卒業まであと数ヵ月まで迫っていた。

結局、なにも進展はなく、成長するに連れて少しずつ翼と俺は完全にただのクラスメートになった。

朝、一緒に登校することもいつの間にかなくなって

修学旅行も、音楽祭も運動会も、彼女との思い出はなにもない。

気づけば彼女に一目惚れをしてから、6年になろうとしていた。




50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:29:11.20 ID:o1a6zt2Q.net
最後釣りでしたー、よかった振られた男はいなかったんだね。で終わるやつだな



52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:40:02.06 ID:vbuqeZbH.net
>>50
そっちのが気は楽でいいね




51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:39:32.10 ID:vbuqeZbH.net
そして、卒業式を迎えた。

仲の良い友達は何人かいたし、離れるのか悲しい先生も何人かいたけど、一番悲しかったのは、やっぱり翼と離れることだった。


翼は中高一貫の中学に進学することが決まってて、俺とは別の学校に通うことになる。

それはつまり、今度こそ本当に翼との別れを意味していた。


「藤森くん、中学別々になっちゃったね」


卒業証書を受け取って、式も終わって、各々が記念撮影だったり先生との別れを惜しんだりしているなかで、翼は俺のそばまで寄ってきてそう言った。

手には卒業証書の筒が握られていて、そんな彼女は俺とは別の制服を着ていた。

「そうだね」

本当は、もっと言いたいことがたくさんあったのに、本人を目の前にすると何を言っていいかわからない。

つまらない人間の俺は、相槌を打つくらいしかできなかった。


「いっつも、一緒に登校して楽しかったね」

「私はもう虫触れないや」

そんなやりとりを一言二言交わして、俺たちは記念に写真を撮った。

翼が先生にお願いをして、ツーショットを撮ってもらった。

別々の中学の制服に身を包んで、にっこり笑う翼とぎこちなく笑う俺。


こんな時まで俺はどんな顔をしたらいいかわからずに、中途半端に笑ってた。


そうして、お互いケータイを持ってないから、当然連絡先を交換することなく、離れ離れになった。





56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 17:22:49.38 ID:wGYz6pa9.net
中学に入ってからは、特に不満もなく、かといって充実もしない安定した日々を送っていた。

翼の連絡先を知らなかった俺だが、当然彼女の家に行く勇気があるはずもなく、妄想しては落ち込む生活が続いた。


いつも夢に出てきた。小さい頃一緒にはしゃいだ思い出が補正されていたこともあってか、いつも見るのは小学校低学年の翼の姿だった。

木登りや虫取が大好きな彼女も高学年ではおしとやかで品のある女の子になっていて、成績も俺より断然よかったし、きっと俺はもう一生彼女に会えないんだと一人絶望を感じていた。


そんなある日、友達から翼のことを聞かされた。

どうやら近々、海外に行くとのことだった。

父親が海岸に赴任することになり、家族みんなでニュージーランドに行くことになったそうだった。


その時初めて、俺は彼女の家柄を知った。どこまでも彼女は遠い人だった。俺なんかが好きになる資格がないほど、翼はお嬢様だった。




58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 17:41:06.37 ID:wGYz6pa9.net
彼女の父親は、精密機械の部品メーカーの偉い人らしく、元々彼女の家にいることは少なかったらしいのだが、海外に赴任が決まったことで家族全員向こうの国で暮らすことに決めたらしい。


全然知らなかった。なんとなく、別の世界の住人のように思えた。

お前らはたかが海外移住だろと思うかもしれないが、俺の周りではダントツに彼女の家はお金持ちで、お嬢様だった。

小学2年生の夏くらいからピアノを習いに通っていたらしいが、そういうことかと密かに思った。

この時、俺たちはもうすぐ中学2年生になろうとしている冬だった。

翼が日本をたつのは3月で、わずかあと3カ月ほどの猶予しか残されていなかった。

本当にこれでいいのか。今度こそ彼女にはもう会えないだろう。

そう思うと、いても立ってもいられなかった。

せめて声が聞きたかった。

一目でも会いたかった。


きもいだろ?今まで以上に、俺の夢の中には翼が現れるようになっていた。




61 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 20:58:53.47 ID:vbuqeZbH.net
彼女が海外へ飛び立ってしまう1週間前くらいだったと思う。

俺は恥を捨てて、小学校のクラスメートから翼の連絡先を受け取った。

といっても、俺も翼も携帯を持ってなかったから、手にいれた連絡先は翼家の固定電話番号。

友達から受け取った番号のメモを片手に、俺は電話の前でしばらくぼーっとしてた。


その日は休日で、親は家を出ていた。

平日は夕方まで学校で、電話をかけるタイミングがわからない。

親に翼への気持ちが知られるのを嫌った俺にとって、その日は間違いなくラストチャンスだった。


どれくらいぼーっとメモを見つめていただろう。時刻は20時とか21時とか、そんな感じ。

今かけても迷惑じゃないだろうか、常識知らずだと思われるだろうか。

そんな葛藤と闘いながら、俺は震える指で番号を押した。

数秒間コールが鳴り響く。

心臓が飛び出そうなくらい俺は緊張していた。

それからまもなくして

「もしもし」

そう言って電話に出たのは翼だった。

半年ぶりに聞いた、大好きで綺麗な声だった。




63 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 22:01:25.66 ID:vbuqeZbH.net
「もしもし、藤森だよ」

「藤森くん!?久しぶり!どうしたの?」

「うん…」

俺の声は震えてたかもしれない。かけてみたはいいものの、なんて言っていいかもわからず、曖昧な返事をした。

ここまで来ても保身に走る自分への怒りと、久しぶりに聞いた翼の声を聞けた嬉しさで俺の頭はどうにかなりそうだった。


「…元気にしてる?」

沈黙に耐えきれなくなったんだろうな。翼の方から話しかけてくれた。

彼女はいつもそうだった。第一声はいつも翼の方からで、俺はその言葉に曖昧に返事をするばかりだった。

「元気だよ、翼ちゃんは?」

「私?まあまあ元気」

「藤森くんは学校楽しい?」

「まあまあ、かな」

「なにそれー」

「翼ちゃんは、楽しい?」


全部おうむ返し。つくづく自分のコミュ力の無さが嫌になる。

「楽しい、よ?」

くすくすと笑う翼の声にどこか影があるような気がした。

もちろん俺にそれ以上掘り下げる勇気なんてあるはずもなくて、それから数回似たようなやりとりをした。


「そういえば、引っ越すんだって?」


ようやく俺の心臓も落ち着いてきた頃、俺は聞きたかった質問を投げ掛けた。


今日、告白しようと思った。

付き合ってほしいとか、彼女の返事を聞きたいとか、そんなことは一切考えてなかった。

小学生の頃、くだらない理由で伝えられなかった言葉を伝えようと思った。


彼女が引っ越してしまえば、それこそ気軽に話せる環境ではなくなってしまう。

もう声だって聞けないかもしれない。

会うことなんて、もっと難しくなるだろう。

頭ではわかってるのに。

結局、この日も俺は想いを告げられなかった。






>>次のページへ続く



 

 

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カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 青春,
 


 
 
 
 
 

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