228 :佐々木:02/11/20 02:59 ID:xv4SYBsL
あれは俺が19歳のころ。
フリーターだった俺はあるステーキハウスの調理場スタッフとして働いていた。
16の時から ここのお店にはお世話になっていて調理場のことは店長から任されており、いわばキッチンリーダーみたいなものになっていた。
やはり、10月ごろになると受験やなんやかんやでバイトの子たちはやめていくもの。
そして、それと同時にバイトも募集をしていた。
そして一人の女の子が調理場に新人として入ったのである。
名前は遠藤沙希(仮名)あっ!ちなみに俺は佐々木で御願いします。
で、その遠藤は まったくの素人で包丁もろくに触れないような子だった。
ただ、今時にはいないような真面目な感じの高校生である。
俺 「遠藤、お前って・・・料理つくったりしないの?」
遠藤「そんな彼氏もいないんで作っても誰も食べてくれないでしょ?」
俺 「そんな問題じゃないと思うけど・・・まあ頑張るように!」
遠藤「佐々木さん、よろしくです!」
こんな感じで、遠藤の初日は終わった。
229 :佐々木:02/11/20 03:02 ID:xv4SYBsL
それからというもの、俺は遠藤に付きっ切りで色々なこと教えた。時には怒ったり、時には褒めたりで。
俺自身けっこう楽しかった。反対に遠藤は必死みたいだったけどね。
ある日、遠藤が俺にこう言ってきた。
遠藤「佐々木さんって・・・彼女いるんですか?」
俺 「ん?いるよ。2歳年上の子だけど。どうかしたか?」
遠藤「そっか〜・・・やっぱりいますよね。」
俺 「おっ!もしかして俺のこと好きになったとか?(笑)」
遠藤「ち、ちがいますよ!ただ、クリスマス暇なんでどうしよっかな〜って・・・」
俺 「そういえば もうすぐクリスマスだな。一緒に遊ぶか?」
遠藤「えっ!?彼女は大丈夫なんですか?」
俺 「いまオーストラリアに留学中だからな。俺も一人で寂しいし」
遠藤「ほんとですか?会います!楽しみにしてます」
俺 「じゃあ、クリスマスはデートしような。さぁ仕事仕事!」
遠藤「はい!!!!!!」
230 :佐々木:02/11/20 03:03 ID:xv4SYBsL
俺も実際、うすうすとは気付いていた。遠藤が俺に好意を持ってるって。
妹みたいな感じでカワイイ奴だったんでいいかな〜って思ってた。
そして12月24日の夜、遠藤からメールが届いた。
遠藤『佐々木さん♪明日はどうしますか?』
俺 『そうだな〜。ちょっと遠いけど○○の駅前はどう?』
遠藤『わかりました!ちょっと遠いけど頑張っていきますね♪』
俺 『気をつけて来いよ。』
遠藤『わかってますよ!先輩♪では、オヤスミなさ〜い』
俺 『おやすみ』
そして次の日、俺はバイトも終わり遠藤との約束時間に遅れないためにもせっせと用意していた。
すると予期せぬことが起こった。
俺の携帯が鳴る・・・・・プルルルルル・・・なんと彼女からだ。
231 :佐々木:02/11/20 03:06 ID:xv4SYBsL
俺はびっくりして電話にでた。
俺 「もしもし?」
彼女「あっ、びっくりした?せっかくのクリスマスだし帰ってきちゃった」
俺 「マジで!?いまどこよ!」
彼女「いま羽田にいるよ。いまから会いたい・・・いいでしょ?」
俺はほんとに迷った。駅では遠藤が待っている。俺はとっさに返事をしてしまった。
俺 「いいよ。じゃあ待ってる。」
彼女「うん。いまから行くね!じゃあね」
俺は電話を切ったあと頭を抱えた。どうしよう・・・とりあえず、正直に話そうと遠藤に電話した。
遠藤「もしも〜し!佐々木さん!遅いですよ〜!」
俺 「・・・わるい!行けなくなった!」
遠藤「えっ?」
俺 「彼女がいきなり帰ってきてさ・・・で・・・あの〜・・・」
遠藤「・・・そうですか。わかりました。じゃあ・・・」
俺 「お、おい!遠藤?おい!・・・」
232 :佐々木:02/11/20 03:07 ID:xv4SYBsL
遠藤は悲しそうに電話をきった。俺は悪いことをしたと思っていたが
久しぶりに会う彼女のことで すぐに頭がそちらのほうに切り替わっていた。
しばらくすると彼女が俺の家に来て、一緒にケーキを食べながらあちらでの生活のこととかも聞きながら楽しい時間を過ごしていた。
久しぶりに会ったせいか、エッチも一杯した。体力がなくなるぐらい激しく。
そして次の日、バイト先にいくとありえない現実が俺を待っていた。
俺はいつものように調理場でオープン準備をしていると店長が険しい顔で俺に話しかけてきた。
店長「佐々木、遠藤のことだけど・・・」
俺 「遠藤がどうかしました?」
店長「昨日の夜、車に轢かれたみたいでさ・・・即死だったそうだ」
俺 「えっ!嘘でしょ!?・・・」
店長「夜の8時半ぐらいらしい。○○の駅の近くでな」
233 :佐々木:02/11/20 03:09 ID:xv4SYBsL
8時半と言えば、俺が遠藤に「行けない」って電話した直後。
俺は固まった。まるで金縛りにあったかのように。
店長「で、今日お通夜いくから佐々木も来いよ」
俺 「・・・・・はい・・・・・」
そして お通夜に行ってきたんだ。周りには学校の同級生がいっぱいいて泣いている子もいれば下にうつむいてる子もいた。
すると、遠藤のお母さんが店長と俺に挨拶にきてくれた。
母 「この度は来て下さってありがとうございます」
俺 「・・・・・・」
店長「ご愁傷様です。ほんとに残念なことになって・・・」
俺は何も言えなかった。俺があの時、遠藤と会っていればこんなことにはならなかった。
その後悔が波のように俺へ押し寄せていた。
すると遠藤のお母さんが俺に話しかけてきた。
234 :佐々木:02/11/20 03:10 ID:xv4SYBsL
母 「あの〜、バイト先のほうで佐々木さんて方おられますか?」
俺 「えっ!あの・・・それ俺です」
母 「あなたが佐々木くんね・・・いつも娘からあなたの事を聞いてたんですよ」
俺 「俺のことを?」
母 「大好きな先輩がいるってね・・・バイトが毎日楽しいっていつも言ってました」
そういうとお母さんは泣きながら、俺にボロボロの袋を手渡した。
母 「これね・・・あの子が死んだとき、離さずに持ってたものなの。あなたへのクリスマスプレゼントだと思うの。もらってあげて・・・」
俺は手がガクガク震えながら その袋をあけてみた。すると中には手編みの手袋と小さな手紙が入っていた。
その手紙にはこう書いてあった。
235 :佐々木:02/11/20 03:11 ID:xv4SYBsL
『佐々木先輩へ
いつもドンクサイ私を支えてくれてありがとうです。
でもバイト始めたときと比べてはかなり上達したでしょ?めちゃ頑張ってます♪
佐々木先輩には彼女いるけど、今日は会ってくれてほんとに嬉しいです。
こうやって一生懸命頑張れるのも佐々木先輩のおかげです。佐々木先輩がいない日のバイトはつまんないし、おもしろくありません。
だから私のいるときは必ず入ってください(笑)
これからも どうしようもない遠藤沙希ですが、どうかよろしくお願いしますね♪ 佐々木先輩大好きです』
俺の胸は激しく痛み出し、涙が溢れてきた。立っているのもやっとで・・・
236 :佐々木:02/11/20 03:13 ID:xv4SYBsL
あれから3年たった今、俺は出版会社に就職し日々の仕事に追われている。
あの彼女とも留学先のオーストラリア人とデキたみたいで、1年前に別れた。
今年も遠藤の命日が近づいている。
今日もあの手袋をして会社に行こう。
以上です。長々とすいませんでした。
239 : :02/11/20 11:02 ID:80Y50goI
何事にもタラレバは無いんだけど・・・悲しいな・゚・(ノД`)・゚・
ガンガレ佐々木!
241 :佐々木:02/11/20 13:35 ID:tbpm45bC
佐々木です。続きがあるのですが・・・よかったら読んでください。
遠藤が亡くなってすぐ、俺は絶望の果てにいた。
やはり後悔に押しつぶされていた。
オーストラリアから一時帰国中の彼女はとりあえず正月は実家で過ごすみたいで。
俺は彼女(由美子)と二人で1月元旦に初詣に出かけた。
由美子「やっぱり元気ないね・・・」
俺 「いや・・・大丈夫だよ。」
由美子「で、その遠藤って子のこと好きだったの?」
俺 「えっ?何言い出すんだよ。おまえ」
由美子「だってそうじゃない!私が帰ってこなければその子は死なずに済んだんでしょ!?」
俺 「由美子には関係ないよ。ただバイトの後輩だよ・・・後輩だよ」
由美子「あんたがそう言ってもあんたの目が私をそういう目で見てるの!」
俺 「なんなんだよ!!何が言いたいんだよ!いい加減にしろよ」
由美子「・・・帰る」
俺たちは初詣にこのような喧嘩をしてしまい、その日はそれでお互いの家路についた。
242 :佐々木:02/11/20 13:36 ID:tbpm45bC
バイト先のステーキハウスは年中無休のお店で俺は2日から調理場に立っていた。
すると一個上の先輩、後藤くんが俺に話しかけてきた。
後藤「佐々木、聞いたよ。遠藤ってあの日お前と会うために待ってたんだってな」
俺 「・・・・・・・」
後藤「おい!何とか言えよ」
俺 「・・・それがどうかしたんすか。後藤くんには関係ないっしょ!」
後藤「俺はお前を許さないからな。遠藤もこれじゃあ救われないよ!!!」
俺 「・・・・・・・」
後藤くんは俺に憎しみの言葉をぶつけてホールの方へ消えていった。
あとから知ったことだが後藤くんは遠藤のことが好きだったらしい。
243 :佐々木:02/11/20 13:37 ID:tbpm45bC
その夜、俺は晩御飯も食べずにベッドの上でボーっとしていた。
何を考えてたかというと、やはり遠藤のこと。
由美子のことなんか考えてる暇はなかった。しかし由美子を俺は愛している。
けど、遠藤のことが頭をよぎる。
ストレスというか、すっごい圧迫された空間に落とされた気分。
4日はバイト休みだったので一度、事故現場に行ってみようと決心した。
で、4日の朝早く俺は○○駅に立っていた。
目の前には花束が供えてある。
ここが遠藤の死んだ場所。
ついこの間まで「佐々木先輩、たまねぎの千切りうまくなったでしょ!?」って元気いっぱいで俺に話してきたのに・・・俺はそこで手を合わせ、目をつぶった。
真っ暗な目の中で遠藤の姿が走馬灯のように駆け巡る。
俺は深呼吸をし、帰ろうと振り返った。
その時、そこには由美子が一輪の花をもって立っていた。
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