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15年片想いしてた人に別れを告げてきた
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49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:24:37.91 ID:vbuqeZbH.net
それからのことは、よくわからない。

何人かが翼に告白をしたらしいが、彼女は顔を真っ赤にするばかりで自分の気持ちを誰にも話すことはなかったようだった。


つまりみんなフラれたのだ。

俺は影で小さくガッツポーズをしていた。

自分から告白する勇気もないくせに、勇気をもって告白した男子がフラれるのが嬉しくて仕方なかった。

「私また告白されたんだー」

朝、登校の時に彼女はそんなことをよく俺に話していた。

俺はただ、そうなんだと相討ちを打つことしかできなくて、何て返事をしたのかも、翼に好きな人がいるのかも知らないまま時間だけが過ぎていった。

「藤森くんは、誰が好きなの?」

一度だけ聞かれたことがあったが、その時は、「教えられない」となんとも情けない返事をした記憶がある。

それから6年生になって、活発だった彼女もおしとやかで大人しい女の子へと変わっていった。

気づけば卒業まであと数ヵ月まで迫っていた。

結局、なにも進展はなく、成長するに連れて少しずつ翼と俺は完全にただのクラスメートになった。

朝、一緒に登校することもいつの間にかなくなって

修学旅行も、音楽祭も運動会も、彼女との思い出はなにもない。

気づけば彼女に一目惚れをしてから、6年になろうとしていた。




50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:29:11.20 ID:o1a6zt2Q.net
最後釣りでしたー、よかった振られた男はいなかったんだね。で終わるやつだな



52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:40:02.06 ID:vbuqeZbH.net
>>50
そっちのが気は楽でいいね







51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 01:39:32.10 ID:vbuqeZbH.net
そして、卒業式を迎えた。

仲の良い友達は何人かいたし、離れるのか悲しい先生も何人かいたけど、一番悲しかったのは、やっぱり翼と離れることだった。


翼は中高一貫の中学に進学することが決まってて、俺とは別の学校に通うことになる。

それはつまり、今度こそ本当に翼との別れを意味していた。


「藤森くん、中学別々になっちゃったね」


卒業証書を受け取って、式も終わって、各々が記念撮影だったり先生との別れを惜しんだりしているなかで、翼は俺のそばまで寄ってきてそう言った。

手には卒業証書の筒が握られていて、そんな彼女は俺とは別の制服を着ていた。

「そうだね」

本当は、もっと言いたいことがたくさんあったのに、本人を目の前にすると何を言っていいかわからない。

つまらない人間の俺は、相槌を打つくらいしかできなかった。


「いっつも、一緒に登校して楽しかったね」

「私はもう虫触れないや」

そんなやりとりを一言二言交わして、俺たちは記念に写真を撮った。

翼が先生にお願いをして、ツーショットを撮ってもらった。

別々の中学の制服に身を包んで、にっこり笑う翼とぎこちなく笑う俺。


こんな時まで俺はどんな顔をしたらいいかわからずに、中途半端に笑ってた。


そうして、お互いケータイを持ってないから、当然連絡先を交換することなく、離れ離れになった。



56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 17:22:49.38 ID:wGYz6pa9.net
中学に入ってからは、特に不満もなく、かといって充実もしない安定した日々を送っていた。

翼の連絡先を知らなかった俺だが、当然彼女の家に行く勇気があるはずもなく、妄想しては落ち込む生活が続いた。


いつも夢に出てきた。小さい頃一緒にはしゃいだ思い出が補正されていたこともあってか、いつも見るのは小学校低学年の翼の姿だった。

木登りや虫取が大好きな彼女も高学年ではおしとやかで品のある女の子になっていて、成績も俺より断然よかったし、きっと俺はもう一生彼女に会えないんだと一人絶望を感じていた。


そんなある日、友達から翼のことを聞かされた。

どうやら近々、海外に行くとのことだった。

父親が海岸に赴任することになり、家族みんなでニュージーランドに行くことになったそうだった。


その時初めて、俺は彼女の家柄を知った。どこまでも彼女は遠い人だった。俺なんかが好きになる資格がないほど、翼はお嬢様だった。




58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 17:41:06.37 ID:wGYz6pa9.net
彼女の父親は、精密機械の部品メーカーの偉い人らしく、元々彼女の家にいることは少なかったらしいのだが、海外に赴任が決まったことで家族全員向こうの国で暮らすことに決めたらしい。


全然知らなかった。なんとなく、別の世界の住人のように思えた。

お前らはたかが海外移住だろと思うかもしれないが、俺の周りではダントツに彼女の家はお金持ちで、お嬢様だった。

小学2年生の夏くらいからピアノを習いに通っていたらしいが、そういうことかと密かに思った。

この時、俺たちはもうすぐ中学2年生になろうとしている冬だった。

翼が日本をたつのは3月で、わずかあと3カ月ほどの猶予しか残されていなかった。

本当にこれでいいのか。今度こそ彼女にはもう会えないだろう。

そう思うと、いても立ってもいられなかった。

せめて声が聞きたかった。

一目でも会いたかった。


きもいだろ?今まで以上に、俺の夢の中には翼が現れるようになっていた。




61 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 20:58:53.47 ID:vbuqeZbH.net
彼女が海外へ飛び立ってしまう1週間前くらいだったと思う。

俺は恥を捨てて、小学校のクラスメートから翼の連絡先を受け取った。

といっても、俺も翼も携帯を持ってなかったから、手にいれた連絡先は翼家の固定電話番号。

友達から受け取った番号のメモを片手に、俺は電話の前でしばらくぼーっとしてた。


その日は休日で、親は家を出ていた。

平日は夕方まで学校で、電話をかけるタイミングがわからない。

親に翼への気持ちが知られるのを嫌った俺にとって、その日は間違いなくラストチャンスだった。


どれくらいぼーっとメモを見つめていただろう。時刻は20時とか21時とか、そんな感じ。

今かけても迷惑じゃないだろうか、常識知らずだと思われるだろうか。

そんな葛藤と闘いながら、俺は震える指で番号を押した。

数秒間コールが鳴り響く。

心臓が飛び出そうなくらい俺は緊張していた。

それからまもなくして

「もしもし」

そう言って電話に出たのは翼だった。

半年ぶりに聞いた、大好きで綺麗な声だった。






63 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 22:01:25.66 ID:vbuqeZbH.net
「もしもし、藤森だよ」

「藤森くん!?久しぶり!どうしたの?」

「うん…」

俺の声は震えてたかもしれない。かけてみたはいいものの、なんて言っていいかもわからず、曖昧な返事をした。

ここまで来ても保身に走る自分への怒りと、久しぶりに聞いた翼の声を聞けた嬉しさで俺の頭はどうにかなりそうだった。


「…元気にしてる?」

沈黙に耐えきれなくなったんだろうな。翼の方から話しかけてくれた。

彼女はいつもそうだった。第一声はいつも翼の方からで、俺はその言葉に曖昧に返事をするばかりだった。

「元気だよ、翼ちゃんは?」

「私?まあまあ元気」

「藤森くんは学校楽しい?」

「まあまあ、かな」

「なにそれー」

「翼ちゃんは、楽しい?」


全部おうむ返し。つくづく自分のコミュ力の無さが嫌になる。

「楽しい、よ?」

くすくすと笑う翼の声にどこか影があるような気がした。

もちろん俺にそれ以上掘り下げる勇気なんてあるはずもなくて、それから数回似たようなやりとりをした。


「そういえば、引っ越すんだって?」


ようやく俺の心臓も落ち着いてきた頃、俺は聞きたかった質問を投げ掛けた。


今日、告白しようと思った。

付き合ってほしいとか、彼女の返事を聞きたいとか、そんなことは一切考えてなかった。

小学生の頃、くだらない理由で伝えられなかった言葉を伝えようと思った。


彼女が引っ越してしまえば、それこそ気軽に話せる環境ではなくなってしまう。

もう声だって聞けないかもしれない。

会うことなんて、もっと難しくなるだろう。

頭ではわかってるのに。

結局、この日も俺は想いを告げられなかった。




64 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 22:30:44.11 ID:vbuqeZbH.net
それからすぐ、翼一家は日本を旅立った。

俺は空港まで見送りに行った。


好きだとは伝えられないくせに、見送りには行かせてほしいと身勝手な約束をした。

翼は喜んでいた、と思う。


別れはあっさりしてた。

当然、俺と翼は付き合ってるわけでもないし、お互い泣くような間柄でもなかったしな。俺は泣きたかったけど。


これで、ようやく前に進めると思った。

翼のことは忘れようと思った。


いつでも会える距離に、声が聞こえる場所にいたからずっと引きずってたんだ。

そう思い込むようにしていた。


久々に会う翼はやっぱり可愛くて、小学校の頃とは違う大人びた格好をしていた。

まあ、お互い中学1年生だし、今思えばまだまだ子供らしい服装だったけど。


「見送り来てくれるなんて思わなかった」

翼は笑ってた。たぶん、作り笑いじゃなかったと思う。

「向こうで元気にやってね」

俺にはこの言葉が精一杯だった。

寂しいとか、好きだとかそんなことを面と向かって言える人は本当にすごいと思うし、今でも尊敬する。

なのに、彼女はそれが言える人だった。

「…藤森くんと会えないのは、寂しいなぁ」

翼は、少しうつ向き気味にそんなことを言った。

息が止まった。

それくらい驚いた。

まさかそんなこと言われるとは思ってなかったから。


「俺もだよ」

目は泳いでたと思う。

結局はオウム返ししかできなかったけど、彼女の言葉は泣いてしまいそうになるほど嬉しかった。



65 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/24(木) 23:13:53.62 ID:vbuqeZbH.net
「また会おうね、藤森くん」

「うん、また会おう」

しばらく翼は俺に手を振って、俺も振り返した。

翼のお父さんとお母さんはとても良い人で、彼女が俺のことを事前に伝えていたのだろう。

「翼と、これからも仲良くしてね」

そう言って、翼一家はゲートの奥に言ってしまった。


もう明日から、俺は彼女のことを忘れて生きていこう。告白もせずに勝手に惚れて、勝手に諦めた。


でも、彼女の一言が、また翼をどうしようもなく好きにさせてしまった。

「高校生になっても、大学生になっても忘れない!藤森くんに会いに行くよ!だから、また一緒に話そう!」


大きな声でそう言った翼は、他の人たちから興味深そうな目で見られていた。いいねーなんて言ってるおばさんもいた。

ドラマみたいだと思った。

だから、俺も彼女の言葉に大きな声で返事をした。


誰に見られてもいいと思った。今なら、笑われても構わなかった。

どこの名前も知らない他人に笑われるより、俺は翼の笑顔が見たかった。


「絶対また会おうね!ずっと待ってるからね!」

好きとは言えなかったけど、頑張った方だろ?

これが彼女に恋をしてもうすぐ7年目の出来事だった。


それからしばらく、中学を卒業するまで、俺は彼女の声を聞くことはなかった。

もちろん、彼女の方から電話がかかってくることもなかった。

それでも片想いを続けて、気づけば9年になっていた。




73 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/11/25(金) 15:16:47.62 ID:09W5ShRG.net
俺は中学で翼を見送った日から心に決めたことがあった。

それは、彼女と対等に話せるような男になること。

具体的にはもっと勉強をして、せめて翼の学力に追い付けるくらいの学力を身に付けること。

彼女に尊敬してもらえるような人間になることだった。


昔から翼に気を使わせていて、肝心な時はいつも彼女のオウム返ししかできない情けない自分を変えたかった。


だから勉強をした。

部活もがんばった。

そんな日々が続いた。


そうすると、なんというか、やっぱり自分に自信がついてくるんだよな。

少しずつだけど友達も増えてきて、卒業を迎える頃には充実した学校生活を送ってたと思う。


実は何度か告白されたりもした。

全部断ったけどね。

頭では諦めようと思ってても、そんなのできるはずなかった。

それくらい俺は彼女が好きだった。

空港で彼女に言われた言葉が、ずっと頭の中で響いてた。



相変わらず、夢にも時々出てきてくれた。

小学校の低学年の姿じゃなくて、ちゃんと成長した彼女の姿だった。

でも、場所は大抵小学校の教室だった。

小学生の高学年くらいに彼女の家を知ったけど、翼との思い出はやっぱりあの教室だったから。


彼女の、また会おうねっていう言葉だけを糧に俺は勉強に打ち込んで、そして高校にも無事に入学が決まった。





>>次のページへ続く


 

 

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