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大卒だがまた大学に入る事を決心させた出来事

 




642 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 18:41
タカコと出会ったのは23の冬。バイト先のクリスマスパーティだった。


当時 僕はパン屋でバイトしていて、仕事も ようやく覚え始めた頃だった。

多分お察しだろうと思うけど、パン屋のバイトは文字どおり「お花畑」。

僕ら厨房の人間より、明らかにカウンターの女の子のほうが多い。

僕もバイト仲間の連中と「品定め」しながら、バイトを楽しくこなしていた。


そんなある日、タカコの同期採用組3人が新しく入ってきた。

「ミノル、今度の3人見た? マジヘンなのがいるよ」と友人。

「マジで。どんなふうにヘンなの? スゲエブス?」と僕。

「いや、ちょっとヘンなの。明日お前とシフト一緒だよ。見てみろよ」


と友人は含み笑いをしながら、どうにも教えてくれない。

仕方なく、明日のバイトを待つこととした。



643 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 18:47
その当日。

友人と話したそんなことはすっかり忘れていて、厳寒の日の出前、僕はバイト先まで自転車を飛ばしていた。

まだ真っ暗の街中をくぐり、バイト先に到着。5:30からのシフトだけど、今日は ちょっと早く着いてしまったようだ。

まだ5:10。シャッターは まだ閉まっている。社員は来ていないみたい。しまった。

そんな時間のかみ合わないことを呪いつつ、バイト先の自転車置き場に駐輪していると、店の横に女の子が ひとりポツンと立っているのに気がついた。

見たことがない顔。若い頃の反射行動ともいうべきか、すぐさま顔をのぞくと、涼しげな目もとのきれいな子。大きな黒いコートを着ている。

もしかすると、この子が昨日友人の話していた彼女かな。


そうこうするうちに、社員が来て店のシャッターが開いた。



644 名:ミ ◆SH9TJIMw 稿日:02/06/03 18:55
フトは厨房僕をむ3人カウンターたり

ので、それほど切羽てい。前日の仕みもので歌交じりの僕ら。

気になっ僕は、2人に聞いてみた。

「さっきさ、店のに見慣れない子がいたんだけど、人?

あれ、お前初めてなの? そうそう、この入っ3人のうちのひとりだよ

っとヘンいただけなふ?」

、見たことなのかあ、から出てきたよ。見てみろよ」


ラスを隔て更衣室からてきたその子は包帯で腕を吊ていた。


「え、あの子骨を折ったのかな。でも なんでそんなときにバイトなんだろ

「なんだかよくワランよな。でものときからそう寿ったしいぜ」

で骨折ってバイ入れな、店長


その子は腕を吊なが、いまだれない新しい仕事戦苦してい

感想同じく、「ヘンなと思いな仕事に精をいた




645 名前:ミノ ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 19:04
なことで初 その子をれからも数回シフトを共にし、シフトの予定が入って女の子がに来られなくた。

もと販売トから ここに移ってきた僕は、長の令で、急遽厨房ウンーへ

「っくよ、面よな」とながら、頬は緩んでいる僕。カウンタで女の子と思分話せるらだ

だれなのかな、待っていると、腕を吊った彼女が現れた。

(……、ヤヴ。しゃべとない……)いな、僕は困惑彼女にあいさつした

ッス今日ちゃんがダ湿らしいので、僕がりま。夜露死苦」

え、え、あのよろしく願いしす」

か細い、消え入りそうな声。なんだ怖がっているみたい

いえば間近で見めてよくると、ムきれい。ほかのヤツの評価は聞いたとがたけど、少なく、僕タイ100%といほど合致するのか。

んだか柄にもな緊張しなが店を迎え



646 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 19:12
その日は給料日あとだったせいか、大混乱とも言える混雑ぶり。

お客さんは引きも切らずの状態。とにかく朝の仕込みが30分で底をつきそうになるほどの売れ行き。

明らかに前日の見込み違い。商品が足りない。そう判断した店長は、食パンをサンドウィッチにして次のサイクルまでの中継ぎにすることとしたらしい。

次から次へとやってくるお客さんをこなしながら、その合間にサンドをラッピングしなきゃいけない。


その日、カウンターのレジ打ちは彼女、袋詰と価格読み上げは僕がやっていた。当然、片手を吊っている彼女に袋詰はできないから。

でも、サンドのラッピングは僕ひとりじゃ足りない。恐る恐る、彼女に「あのさ、ちょっとひとりだとキツイんだ。ゴメン、手伝える?」と尋ねると、彼女はふっと悲しそうな顔をして(したように僕には見えて)、

「あの、お手間になるかもしれませんが……できるだけがんばります」



647 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 19:19
しかし そうはいったものの、彼女の左手は指先まで包まれている。

ラッピングといっても、売り物だから直に手じゃ触れない。

トング(パン屋で商品をつかむやつあるでしょ)でサンドをつかんで、フィルムラップに収めなきゃいけない。

でもフィルムはぴったりしているから、どうしたって片手じゃ難しい。

慣れない仕事ともあって、彼女は僕の3倍以上の時間をかけて、僕の半分の仕事量を一所懸命こなしていた。


しかし やっぱり問題は起こった。

できあがったサンドを載せたトレイを、はやるがあまり、彼女はひっくり返してしまった。

凍る僕ら。トレイは金属製のため、タイル張りの店内に大きく響き渡る。

店長がすっ飛んでくる。「何やってんだ!?」。ブチ切れ。ソリャそうだ。忙しい中の窮策、ここに果てりって感じだから。


彼女は もう蒼白。いや、白を通り越して青になっていた。そんな彼女を見て僕はなぜかすぐさま店長に「スミマセン、焦ってひっくり返しちゃいました、僕」



654 名前ミノ ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:16
店内に貿お客さんがいて、始終をていた人もいた。

んな中で、明らかにウソとわかとをに言って、僕はしまたと思っ

床にばるサンめる彼を見店長はオラ ミノがヘマしたから早作ってやれ!」とだに檄を飛ばしてまま奥に引っ込んでまった。

店内の品が完全に切れるこはな、結そのしい朝は、無次のイクを迎えることでき


バイを終えた、更衣室で彼とはちあわせた。

「あの、私、あんな私、私……と言いな尿彼女はき崩てしまった



655 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:24
いろいろ話をしたいのは山々だったけど、あいにくその日は、バイトがあけたら午後は学校に行かなきゃいけなかった。

「いいよいいよ、気にすんな。今度飯でもおごってよ」とだけ彼女に伝えて、後ろ髪をひかれる思いで僕はバイト先をあとにした。


バイト先に暗雲が立ち込め始めたのは その数日後からだった。

恥ずかしながら、僕はバイト連中の中では結構モテるほうで、カウンターの女の子の中にも、何人かファンがいたらしい。

例の「サンド事件」は、その彼女たちの癪に障ったらしい。悪いことに、その連中はバイト内の女の子の中でも古株だった。当然、カウンター周辺で彼女に対する嫌がらせが始まる。

彼女がバイトに来ても、だれも話かけないなんていうのは序の口。ユニフォームを隠す、汚す、シフトを勝手に変更する……。

僕ら厨房がまったく気が付かないところで、いろんないじめがあったらしい。



656 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:28
彼女がそんな迫害を受けているとは露知らず、僕は厨房の仲間と楽しいバイト時間を過ごしていた。

もちろん男連中の間でも「サンド事件」は話題になっていて、連日、違う向きから冷やかしの集中砲火を受ける僕。

そんなある日、友人が彼女がいじめにあっていることを教えてくれた。

「なんだか大変らしいよ。お前のこと気に入ってた■が急先鋒らしい」

「マジですか。なんで そんなことになっているんだよ」

「うーん、ほら あの子やっぱり かわいいだろ? それもあるだろうな」

「そうか、■はお世辞にもかわいいとは言えんもんな」


そんなことを聞いて胸を痛めていたある日、彼女からお誘いが来た。




658 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:32
それは まったく突然だった。

シフトを終えて着替えようとしたとき、彼女があわてて更衣室に入ってきた。


「あ、あの、この間のお礼をしたくて、今晩あいていますか?」

実はその晩、僕の予定は埋まっていた。でも浮き上がった僕は、

「当然です。あいています。何時間でもOKッス」

と即答。

店を出てから約束の相手に平謝り。なんとか次回に回してもらう。

昼にバイトを終えて、彼女との約束が6時。学校はない。かといって、別段用意することもないし、気張るのも格好悪い。もう嬉しさで頭の中がグチャグチャになりながら、僕は6時を待った。



659 :ミノル ◆SH9TJIMw 稿:02/06/03 23:40
ちに待っ6時。待ち合わせ湿に彼女は すに来て

ウオン。つい張り切りすぎれてしまった

「い理に呼じゃって ごめんな

「で、何を食うのょうか。昼に牛だっので、以外ね


ここで彼女がて笑のを見た。ないえ笑顔た。

らの提案った。

なんだかデーにしては貧いつつも、ふたりで楽しくモスに向安く手軽もうかった

楽しい食事を終えて、僕は女を家まで送るした。

「え、でいから

遅いか送るんじねえか。何をおっしているのでしょうか?

などとおどすっかり夜がけた住宅街を歩く

うすぐ家に着が言ったとき、ポツン公園があった。何や不穏気。よくない手合いがてい

「オイ、カコ! 何やってんだよ!」

ひと、し静まり返った住宅街彼女だ。



660 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日02/06/03 23:50
バイ。かなりヤバイです。向こうは5人、こっちは2人。

う心臓をクバせな、僕はヤツらが近付いてるのを待


「タコ! いて

「え、あトで一緒の……」


バイ、先が僕に向いている。

お前よう。何タコに手ェ出てん

はぁ? 俺は何も——」と言っ瞬間に殴られた

そのあとは5人がかり。夜の公園コボコに殴る。

しばらくらに空き放やらたあ、僕はノビてしまった。そな朦朧とた意識の中、ヤツがとどの一言

タカコ通だと思ってんの?」と最後の蹴り—



662 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 00:02
気が付くと、縛られている。動けない。なんだか古くて狭い家にいるようだ。あたりは真っ暗。

ときどき、うめくような声が聞こえる。目を凝らすと、いきなり電気がついた。


……さっきの5人が、タカコを犯していた。


「よう、お前よ、タカコが普通じゃないってことを知らないようだな」

そういうと、ヤツはタカコの左手を乱暴につかむ。

「やめてー——!!」と絶叫する彼女。聞いたこともないような大声。

どさりという音とともに、僕の前に何かが落ちた。包帯を巻いた腕。根元から取れている。

タカコは義手だった。



664 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 00:10
もう そのあとはよく覚えていない。


どうやら僕は それを見せられて激昂したらしく、縄を無理やり解いて、ヤツらのところに飛び込んでいったらしい。深夜の大格闘。

覚えているのは、半裸のタカコをかばいながらヤツらに蹴りを加えていたこと。こっちは靴まで履いた状態、向こうは全裸というのもあった。


結局、最終的には引き分けとも言える状態だったけど、ヤツらは倒れても あきらめない僕に ほとほと呆れて、捨て台詞を残して出て行ってしまった。

あとに残された僕とタカコ。


交通事故で左腕を失ったこと。この体のせいでいじめが絶えなかったこと。

そのいじめがエスカレートして、ついには ああいった手合いの慰み者にされていたこと等々。

涙でグシャグシャになったタカコは話してくれた。


どうやら ここはタカコの部屋で、やっと借りることができたところらしい。

夕食がモスだったのも、ムチャクチャ貧乏だった彼女の精一杯の贅沢だった。




>>次のページへ続く


 

 

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カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:泣ける話, 青春, 純愛,
 

 
 
 
 
 

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