2月14日。学校帰り、俺はいつもの公園に呼び出された。
「ねえ、賢ちゃん・・私ね、ずっと・・・好きだったの。」
いつも男っぽい佳織が、頬を赤らめて俺に言う。小さな紙袋の中には、可愛くラッピングされたチョコレート。
「手作りなの・・・、た、たべてくれると・・・うれしいんだけど」
可愛い手袋をした手で、不器用に俺に差し出す。いきなりのことで動揺してしまい、俺はただそれを受け取るだけだった。
「返事・・・、ホワイトデーにちょうだい」
そういって、俺にくるっと背を向け走り出す。
当時中2だった俺達は、保育園からの幼馴染。
家も近所で、3歳から一緒に育ってきた佳織からのいきなりの告白。俺は、どうしていいかわからなくなった。
その日は頭が真っ白になって、何も考えられなかったが、なぜか頬を涙が伝っていた。ただ、菓子を作るのが得意な佳織が作った生チョコは、俺も一緒に溶けてしまうんじゃないかと思うほど美味しかった。少しでも佳織の事を考えると、俺は壊れてしまいそうで、極力考えないようにした。
家も近いのに一緒に学校に通わなくなった。
だんだん冷静に考えられるようになったときには、もうホワイトデー。
俺は断った。断らなければならない理由があった。
当時、俺はいじめられていた。
原因は、とある男子が女子に告白したところ、俺が好きだという理由でフられたことらしい。
受験を心配してなのか、表では普通に過ごしているが、毎日のように裏で受ける暴力・・・、
腹や背中にはたくさんの痣や傷があった。それに佳織を巻き込むわけにはいかなかった。
情けなくて、自分がみっともなくて、おかえしのキャンディーを渡して「ごめん」といった後すぐ走り出し、自分の部屋で泣いた。
その日の夜、佳織から電話があった。理由が聞きたい、と。俺は、本当のことが言えなかった。
「お前のこと、ほんとに大切な・・その、・・親友だと思ってるんだ・・・。だから・・・・」
『だから』といったものの、その先は何も思いつかない。受話器のむこうから、佳織の泣き声が聞える。
「・・・ごめん・・。」
「・・・・・謝らなくていいよ、私こそごめん・・・」
「・・・明日から、普通に喋ってくれよ。」
「うん・・・」
電話を切った後、俺は泣いた。女っぽい行為かもしれないが、佳織と一緒にゲームセンターで取ったぬいぐるみを抱きながら泣いた。涙が枯れるまで泣いたと思う。
もうカーテンのすきまからは朝の光が差し込んでいたし、新聞配達の単車の音も聞えてきた。
その日、俺は学校を休んだ。泣きすぎて酷い顔をしていたからだ。
ぎこちない感じこそあったものの、日に日に佳織は以前の佳織に戻っていった。俺も、少しずつ以前と同じように接することができた。
それからは何も無く、俺達は同じ高校に進学した。
少し距離があるが、いじめから開放されるために俺は遠くの高校に行きたかった。
佳織は将来の夢をかなえるために、その高校を選択したらしい。
入学式、俺達は全然くたびれていない制服を着て登校した。
「―――あ、同じクラスじゃん」
「ほんとだね、クサレ縁?(笑)」
「そうとしか言いようがないな・・・」
そんなことをブツクサいいながら、同じ教室に入る。周りの奴と絡もうともせず、俺達は好きなアーティストについて盛り上がった。
「でさ、あのアルバムはやっぱハズレだと思うんだよね」
「ああ、それ俺もおもった。なんか、らしくないよな」
「そうそう!!やっぱあの賢ちゃんが一番最初に聴かせてくれたアルバムが・・・」
そんな話をしていると、俺達のところに女子数人が来た。
「ねえ、何中?」
「○○だよ」
「へ〜・・・付き合ってんの?」
俺達は一瞬硬直した。俺は何も言いたくなかったので、佳織にまかせようとおもった。
一瞬俺の方をチラっと見たが、「え、そんなんじゃないよ。」と、佳織はかわす。
自分からフったのに、「そうか、俺達なにもないのか・・・」と、妙に落ち込んでしまった。
その後は普通にいろんな奴と「あいさつまわり」的な会話を交わした。いろんなやつと喋ったが、やっぱり佳織と2人で居るほうが落ち着くな・・。
それから月日は流れ、俺達は高校3年生になっていた。
2年でクラスがはなれたものの、また3年で同じクラスになれて、俺は嬉しかった。
身長は日を重ねるごとに俺の方が高くなり、佳織は167cm、俺は179cmで、お互いに随分目立つようになっていた。
バスケ部の中で、恋愛の事でいろいろ事件があったり・・・
3年になるまでに、俺は4回、佳織は5回ほど告白を受けたりしたが、全て断った。俺の気持ちは、あの時と全然変わっていなかったからだ。
佳織の気持ちがどうなのかはわからなかったが、俺は受験が終ったら告白しようと思っていた。
俺も佳織も得意分野が同じだったために、俺たちの志望校も同じだった。お互いの家で勉強を教えあい、たまにバスケで息抜きをしながら受験勉強に励んだ。
そして、ラストスパートをかける時期になり、学校と家を往復して勉強するだけの生活を送った。
そんな中、久しぶりに佳織からメールがきた。
『明日の夜、賢ちゃん家行くから家に居てよ。』一方的なメールだが、なんか可愛い。
しかし、何で来るんだ・・・?と、疑問に思っていた。
「おじゃまします。」
「あら、佳織ちゃん!久しぶりじゃない!あがって、賢、部屋に居るから」
「ありがとうございます」
そんな声が玄関から聞え、佳織が部屋に入ってきた。
「やっほう。」
「ん。」と俺は、参考書を開きながら頷く。
「佳織、どうしたんだよいきなり。なんか用事でもあんのか?」
「そういうわけじゃないんだけど。」
「じゃあ勉強しろよ!(笑)」
「カレンダーぐらいちゃんと見ろ!馬鹿!!」
そういって、俺に紙袋を突き出す。
「・・・あ?・・・・・ぁああ。」
バレンタインデーだった。勉強の事で頭がいっぱいで、すっかり忘れていた。
「本命?」と、にやけながら冗談交じりに聞く。
「・・・だったらどうする?」と、佳織。
「んー、・・・OKするに決まってるじゃんか」
「冗談はもういいよ(笑)」
「冗談じゃないって。本気。」
じっと佳織を見つめると、顔が真っ赤になっている。そして、ポロポロと涙を流し始めた。
「だって・・・・だって、あの時だめだっていったから・・・今日は、ただ受験がんばろーって励まして帰ろうっておもってたの・・・・・・。賢ちゃんのことは胸に閉まって、新しい恋しようって思ったりもした・・・でも・・・無理だったの、私、賢ちゃんじゃないと・・だめなの・・・
・・・・・それでもいいの?」
俺は、本能的に佳織を抱きしめた。
「俺も、好きだった。ずっと。でも、○○たちといろいろあっていじめられてたから、それにお前を巻き込みたくなかったんだ。ごめん・・・。」
「え・・・?うそ、そんな話聞いてないよ!」
「嘘じゃないんだ・・。」
俺は、胸の辺りに残る痣を見せた。
佳織は、声をあげて泣いた。俺はそれを強く抱きしめるしかなかった。
佳織の気持ちもおさまってきた頃、俺達はバスケットボールを持って寒空のなか公園に居た。
「・・でも、意外だったな、そんなことがあったなんて」
佳織が俺にパスする。
「こんなこと言うのかっこわりいだろ?
あいつら○○高校の連中と仲良かったからな、さすがの俺でも抵抗する気になんなかったんだよ。
・・・お前に言ったら、○○たちぶっ飛ばしに行きそうだしさ(笑)」
佳織をかわしながら、ゴール。
「そんなこと・・・・しないわけないじゃん。(笑)」
そのボールを持って、佳織がドリブルをはじめる。大きな胸が走るたびに揺れて、そっちに目が行ってしまう。そして、佳織と目が合った。普段ならなんでもないのだが、やはり意識してしまう。
「・・・佳織」
「なに?」
「付き合うのか?俺達」
「ん〜・・・」
佳織はスリーポイントシュートを決めた。
「ナイス!」
「・・・・あのね、賢ちゃん。付き合うの、受験、終ってからにしない??どうせもうすぐだし、今付き合っちゃうと・・なんか・・・・・。」
「・・・ああ、そうだな」
そのあと3ゲームほどしてクタクタになり、『そろそろ帰ろうか』なんていいながら自販機で温かいものを買おうとしたら、いつものクセでアクエリを買ってしまった。
「ふふっ、バカだね〜」
「最近バスケやってねえから、体がやりたがってんだ多分(笑)」
「私もだよ・・・完璧にナマっちゃってるよね。」
そんなことを話しながら、お互いの家に帰った。
部屋に戻って、紙袋からチョコを出す。白と銀のリボンに、真っ赤な包み紙・・・あのときと同じラッピングだ。そして中身も同じだった。
四角くカットされた生チョコをひとつ、口に入れる。何故か、涙があふれてきた。甘くて、ほろ苦くて、でも口の中に溶けて広がると幸せな気分になる味・・・
バスケ部の部長としてお互い頑張った最後の試合も、文化祭も、普段の学校生活も、俺はあいつが居たから頑張れた。
あいつが、ずっと俺を好きで居てくれたから頑張れたのかもしれない。
俺は決めた。受験が終ったらすぐ、プロポーズしようと。
受験当日の朝、俺と佳織は電車で受験会場へと向かった。そして試験を終えた後、会場で俺はこう言った。
「なあ・・・ちょっと、飯食いにいかねぇ?」
「いいよ、私もおなかすいた・・・」
「俺、おごるよ」
「ありがと!」
オシャレなイタリアンの店に入って、俺達はピザとパスタを堪能した。ここで告白しようと思ったのだが、どちらかが泣いてしまうと店に迷惑だろうと思ってやめた。
そして家に帰ろうとすると、佳織が足を止めた。
「ねえ・・・うち、寄っていかない?」
「・・あぁ。」
久しぶりに入る佳織の部屋、相変わらずシンプルで、衣服などはシルバーラックに綺麗に収まっている。
「相変わらず綺麗にしてんなー。」
「そう?」
「ああ、俺の部屋なんてゴミだらけだしな・・・」
そんなことを言いながら、ソファに腰掛ける。CDを流し、佳織が隣に座った。
「・・・なぁ、佳織・・。」
「何?」
俺は上着のポケットから小さな箱を取り出した。中身はもちろん指輪だ。
「はい、これ」
「・・え?」
「その・・・・えっと・・か、佳織が・・、す、好き・・だ。大学出たら、・・・その・・、結婚してほしい。」
佳織はかなり驚いている様子だったが、俺の肩にもたれ掛かってきた。
「あーあ・・・まだ大学に入学もしてないのに、将来の夢が叶っちゃった気分だよ・・・」
「え?おまえって○○(職種)になりたいっつってただろ?」
「違うよ・・・・その、えっと・・・賢ちゃんのお嫁さんになることだよ。」
その一言に愛らしさを感じた。俺は佳織を抱きしめ、「好きだ。佳織・・・愛してる」と呟いた。
佳織は泣き出した。
「待たせてごめんな、辛い思いさせて・・・・・」
「いいの、私・・・今すごく幸せだから・・・・。ありがとう、賢ちゃん・・・・」
数週間後。
「賢ちゃん!!賢ちゃん、合格だったよ!!!」と、封筒を持って俺の家にかけつける佳織。
俺は暗い表情で跪き、「ごめん、俺・・・俺・・・・・・、」と言う。
「え・・・・賢ちゃん、・・・・・まさか・・・・・・・」
佳織の声が震えている。
「賢ちゃん・・・なんか言ってよ、ねえ。ねえ!嘘でしょ!?嘘だよね!?」
「ああ。嘘だ(笑)。」
合格通知を見せる。
佳織は嬉しいんだかむかつくんだか、って感じの微妙な顔で俺を睨んで、近所中に響き渡るんじゃないかと思うほど大きな声で「賢ちゃんのバカ!!!!!!!!!!」と叫んだ。
そんなに遠いわけでもないんだが、自宅から大学まで距離があるため、俺達は部屋探しを始めた。
「ねえ、ここどう??家賃も間取りもいい感じだと思うんだけど・・・」
「俺はこっちのほうが好きかな〜」
そんなことを話しながら、俺達は雑誌を広げる。
俺達は両方の親に何もかもを話し、承諾を得た上で同じアパートで暮らすことが決まっていた。
「佳織がひとりだと心配だから丁度いい」
「賢がひとりだと外食ばかりになるから丁度いい」と、両親も大賛成。小さいうちから家族ぐるみの付き合いしててよかった・・・。
さすがに同棲まで申し出る勇気は出なかったので、できるだけ近い部屋にしようということになった。
「わぁ、ここが私の新しい部屋かぁ〜!」荷物を置いて、佳織が言う。
「まえ一回見に来ただろうが、そんな感動すんなって(笑)」と俺。
「そういうことをいわないでくださいー」と俺に詰め寄る。
「わかったわかったって。さっさと荷物片付けろよ。
俺は自分の部屋の荷物片付けてくるから。」
「は〜い。」
俺の部屋は、佳織と同じ階の、3つほど隣だ。
その日の夜、俺は佳織の部屋で、飯を食った。もちろん佳織のお手製。ロールキャベツ、鮭のムニエル、スイートポテトが、新しいテーブルに並ぶ。
「おいおい、めっちゃ豪華じゃんか。毎日こんな料理作ってたら金いくらあっても足んねーぞ?」
「今日だけに決まってるでしょ!明日からは節約生活だよ(笑)。」
これからのことについて、俺達は美味い飯を食いながら色々語り合った。
飯を食べ終わった後俺はソファーでテレビを見ながらくつろいでいると、食器洗いを終えた佳織が横に腰掛け、俺にもたれかかる。
「重い!」
「失礼な!!!」
佳織の手には、あのときの指輪が輝いている。自然と、佳織と目が合った。俺も佳織も、目をそらさない。そのまま距離はどんどん近づき、俺達はキスをする。
軽いキスだったのが次第に深くなり、そして、お互い初めてなので、ぎこちなく舌を絡めあう。
佳織は俺の首に手をまわし、俺は佳織を抱き寄せ、もっと距離を縮めた。昔と比べて大きくなった佳織の胸が、俺の体にあたる。それが余計に俺を興奮させた。
無意識に、俺は佳織の胸を触った。
「ん・・・っ」と、恥ずかしそうに声を出すが、抵抗しない。それがたまらない。
「賢・・・ちゃんっ・・・・・・」
荒く息をしながら、俺の名前を呼ぶ。
「・・・嫌か?」
「・・・・ううん、そんなことない」
俺達はまた唇を重ねた。
ねっとりとしたディープキスをしながら、俺は佳織のセーターの下に手を入れた。
ブラのうえから胸を触る。「ぃや・・・・。」と小さな声で言ったが、本気で抵抗する気はなさそうだ。
部屋は暖房で充分温かい。俺は、佳織のセーターを脱がせた。黒色のレースが佳織の大きな胸を包み込んでいた。
初めて見た佳織のオトナっぽい下着姿に、俺はかなり興奮した。下のカーペットに押し倒し、キスをしながら胸を愛撫する。
フロントホックのブラをはずすと、綺麗な胸が姿を現した。思わず俺は、ピンクの乳首にしゃぶりついた。
「あああっ賢ちゃん、恥ずかしい・・・・」
もう片方の手で乳首をコリコリと摘むと、佳織の息は一層荒くなった。
「賢ちゃん・・・賢ちゃんっ・・ぁん・・・・・・」
童貞処女コンビなので、どっちがリードするとかもなく、正直このあとどうすればいいのかもわからなかったが、とにかく佳織の可愛い声を聞きたい一心で、俺は佳織の体を愛した。
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「ねえ、賢ちゃん・・私ね、ずっと・・・好きだったの。」
いつも男っぽい佳織が、頬を赤らめて俺に言う。小さな紙袋の中には、可愛くラッピングされたチョコレート。
「手作りなの・・・、た、たべてくれると・・・うれしいんだけど」
可愛い手袋をした手で、不器用に俺に差し出す。いきなりのことで動揺してしまい、俺はただそれを受け取るだけだった。
「返事・・・、ホワイトデーにちょうだい」
そういって、俺にくるっと背を向け走り出す。
当時中2だった俺達は、保育園からの幼馴染。
家も近所で、3歳から一緒に育ってきた佳織からのいきなりの告白。俺は、どうしていいかわからなくなった。
その日は頭が真っ白になって、何も考えられなかったが、なぜか頬を涙が伝っていた。ただ、菓子を作るのが得意な佳織が作った生チョコは、俺も一緒に溶けてしまうんじゃないかと思うほど美味しかった。少しでも佳織の事を考えると、俺は壊れてしまいそうで、極力考えないようにした。
家も近いのに一緒に学校に通わなくなった。
だんだん冷静に考えられるようになったときには、もうホワイトデー。
俺は断った。断らなければならない理由があった。
当時、俺はいじめられていた。
原因は、とある男子が女子に告白したところ、俺が好きだという理由でフられたことらしい。
受験を心配してなのか、表では普通に過ごしているが、毎日のように裏で受ける暴力・・・、
腹や背中にはたくさんの痣や傷があった。それに佳織を巻き込むわけにはいかなかった。
情けなくて、自分がみっともなくて、おかえしのキャンディーを渡して「ごめん」といった後すぐ走り出し、自分の部屋で泣いた。
その日の夜、佳織から電話があった。理由が聞きたい、と。俺は、本当のことが言えなかった。
「お前のこと、ほんとに大切な・・その、・・親友だと思ってるんだ・・・。だから・・・・」
『だから』といったものの、その先は何も思いつかない。受話器のむこうから、佳織の泣き声が聞える。
「・・・ごめん・・。」
「・・・・・謝らなくていいよ、私こそごめん・・・」
「・・・明日から、普通に喋ってくれよ。」
「うん・・・」
電話を切った後、俺は泣いた。女っぽい行為かもしれないが、佳織と一緒にゲームセンターで取ったぬいぐるみを抱きながら泣いた。涙が枯れるまで泣いたと思う。
もうカーテンのすきまからは朝の光が差し込んでいたし、新聞配達の単車の音も聞えてきた。
その日、俺は学校を休んだ。泣きすぎて酷い顔をしていたからだ。
ぎこちない感じこそあったものの、日に日に佳織は以前の佳織に戻っていった。俺も、少しずつ以前と同じように接することができた。
それからは何も無く、俺達は同じ高校に進学した。
少し距離があるが、いじめから開放されるために俺は遠くの高校に行きたかった。
佳織は将来の夢をかなえるために、その高校を選択したらしい。
入学式、俺達は全然くたびれていない制服を着て登校した。
「―――あ、同じクラスじゃん」
「ほんとだね、クサレ縁?(笑)」
「そうとしか言いようがないな・・・」
そんなことをブツクサいいながら、同じ教室に入る。周りの奴と絡もうともせず、俺達は好きなアーティストについて盛り上がった。
「でさ、あのアルバムはやっぱハズレだと思うんだよね」
「ああ、それ俺もおもった。なんか、らしくないよな」
「そうそう!!やっぱあの賢ちゃんが一番最初に聴かせてくれたアルバムが・・・」
そんな話をしていると、俺達のところに女子数人が来た。
「ねえ、何中?」
「○○だよ」
「へ〜・・・付き合ってんの?」
俺達は一瞬硬直した。俺は何も言いたくなかったので、佳織にまかせようとおもった。
一瞬俺の方をチラっと見たが、「え、そんなんじゃないよ。」と、佳織はかわす。
自分からフったのに、「そうか、俺達なにもないのか・・・」と、妙に落ち込んでしまった。
その後は普通にいろんな奴と「あいさつまわり」的な会話を交わした。いろんなやつと喋ったが、やっぱり佳織と2人で居るほうが落ち着くな・・。
それから月日は流れ、俺達は高校3年生になっていた。
2年でクラスがはなれたものの、また3年で同じクラスになれて、俺は嬉しかった。
身長は日を重ねるごとに俺の方が高くなり、佳織は167cm、俺は179cmで、お互いに随分目立つようになっていた。
バスケ部の中で、恋愛の事でいろいろ事件があったり・・・
3年になるまでに、俺は4回、佳織は5回ほど告白を受けたりしたが、全て断った。俺の気持ちは、あの時と全然変わっていなかったからだ。
佳織の気持ちがどうなのかはわからなかったが、俺は受験が終ったら告白しようと思っていた。
俺も佳織も得意分野が同じだったために、俺たちの志望校も同じだった。お互いの家で勉強を教えあい、たまにバスケで息抜きをしながら受験勉強に励んだ。
そして、ラストスパートをかける時期になり、学校と家を往復して勉強するだけの生活を送った。
そんな中、久しぶりに佳織からメールがきた。
『明日の夜、賢ちゃん家行くから家に居てよ。』一方的なメールだが、なんか可愛い。
しかし、何で来るんだ・・・?と、疑問に思っていた。
「おじゃまします。」
「あら、佳織ちゃん!久しぶりじゃない!あがって、賢、部屋に居るから」
「ありがとうございます」
そんな声が玄関から聞え、佳織が部屋に入ってきた。
「やっほう。」
「ん。」と俺は、参考書を開きながら頷く。
「佳織、どうしたんだよいきなり。なんか用事でもあんのか?」
「そういうわけじゃないんだけど。」
「じゃあ勉強しろよ!(笑)」
「カレンダーぐらいちゃんと見ろ!馬鹿!!」
そういって、俺に紙袋を突き出す。
「・・・あ?・・・・・ぁああ。」
バレンタインデーだった。勉強の事で頭がいっぱいで、すっかり忘れていた。
「本命?」と、にやけながら冗談交じりに聞く。
「・・・だったらどうする?」と、佳織。
「んー、・・・OKするに決まってるじゃんか」
「冗談はもういいよ(笑)」
「冗談じゃないって。本気。」
じっと佳織を見つめると、顔が真っ赤になっている。そして、ポロポロと涙を流し始めた。
「だって・・・・だって、あの時だめだっていったから・・・今日は、ただ受験がんばろーって励まして帰ろうっておもってたの・・・・・・。賢ちゃんのことは胸に閉まって、新しい恋しようって思ったりもした・・・でも・・・無理だったの、私、賢ちゃんじゃないと・・だめなの・・・
・・・・・それでもいいの?」
俺は、本能的に佳織を抱きしめた。
「俺も、好きだった。ずっと。でも、○○たちといろいろあっていじめられてたから、それにお前を巻き込みたくなかったんだ。ごめん・・・。」
「え・・・?うそ、そんな話聞いてないよ!」
「嘘じゃないんだ・・。」
俺は、胸の辺りに残る痣を見せた。
佳織は、声をあげて泣いた。俺はそれを強く抱きしめるしかなかった。
佳織の気持ちもおさまってきた頃、俺達はバスケットボールを持って寒空のなか公園に居た。
「・・でも、意外だったな、そんなことがあったなんて」
佳織が俺にパスする。
「こんなこと言うのかっこわりいだろ?
あいつら○○高校の連中と仲良かったからな、さすがの俺でも抵抗する気になんなかったんだよ。
・・・お前に言ったら、○○たちぶっ飛ばしに行きそうだしさ(笑)」
佳織をかわしながら、ゴール。
「そんなこと・・・・しないわけないじゃん。(笑)」
そのボールを持って、佳織がドリブルをはじめる。大きな胸が走るたびに揺れて、そっちに目が行ってしまう。そして、佳織と目が合った。普段ならなんでもないのだが、やはり意識してしまう。
「・・・佳織」
「なに?」
「付き合うのか?俺達」
「ん〜・・・」
佳織はスリーポイントシュートを決めた。
「ナイス!」
「・・・・あのね、賢ちゃん。付き合うの、受験、終ってからにしない??どうせもうすぐだし、今付き合っちゃうと・・なんか・・・・・。」
「・・・ああ、そうだな」
そのあと3ゲームほどしてクタクタになり、『そろそろ帰ろうか』なんていいながら自販機で温かいものを買おうとしたら、いつものクセでアクエリを買ってしまった。
「ふふっ、バカだね〜」
「最近バスケやってねえから、体がやりたがってんだ多分(笑)」
「私もだよ・・・完璧にナマっちゃってるよね。」
そんなことを話しながら、お互いの家に帰った。
部屋に戻って、紙袋からチョコを出す。白と銀のリボンに、真っ赤な包み紙・・・あのときと同じラッピングだ。そして中身も同じだった。
四角くカットされた生チョコをひとつ、口に入れる。何故か、涙があふれてきた。甘くて、ほろ苦くて、でも口の中に溶けて広がると幸せな気分になる味・・・
バスケ部の部長としてお互い頑張った最後の試合も、文化祭も、普段の学校生活も、俺はあいつが居たから頑張れた。
あいつが、ずっと俺を好きで居てくれたから頑張れたのかもしれない。
俺は決めた。受験が終ったらすぐ、プロポーズしようと。
受験当日の朝、俺と佳織は電車で受験会場へと向かった。そして試験を終えた後、会場で俺はこう言った。
「なあ・・・ちょっと、飯食いにいかねぇ?」
「いいよ、私もおなかすいた・・・」
「俺、おごるよ」
「ありがと!」
オシャレなイタリアンの店に入って、俺達はピザとパスタを堪能した。ここで告白しようと思ったのだが、どちらかが泣いてしまうと店に迷惑だろうと思ってやめた。
そして家に帰ろうとすると、佳織が足を止めた。
「ねえ・・・うち、寄っていかない?」
「・・あぁ。」
久しぶりに入る佳織の部屋、相変わらずシンプルで、衣服などはシルバーラックに綺麗に収まっている。
「相変わらず綺麗にしてんなー。」
「そう?」
「ああ、俺の部屋なんてゴミだらけだしな・・・」
そんなことを言いながら、ソファに腰掛ける。CDを流し、佳織が隣に座った。
「・・・なぁ、佳織・・。」
「何?」
俺は上着のポケットから小さな箱を取り出した。中身はもちろん指輪だ。
「はい、これ」
「・・え?」
「その・・・・えっと・・か、佳織が・・、す、好き・・だ。大学出たら、・・・その・・、結婚してほしい。」
佳織はかなり驚いている様子だったが、俺の肩にもたれ掛かってきた。
「あーあ・・・まだ大学に入学もしてないのに、将来の夢が叶っちゃった気分だよ・・・」
「え?おまえって○○(職種)になりたいっつってただろ?」
「違うよ・・・・その、えっと・・・賢ちゃんのお嫁さんになることだよ。」
その一言に愛らしさを感じた。俺は佳織を抱きしめ、「好きだ。佳織・・・愛してる」と呟いた。
佳織は泣き出した。
「待たせてごめんな、辛い思いさせて・・・・・」
「いいの、私・・・今すごく幸せだから・・・・。ありがとう、賢ちゃん・・・・」
数週間後。
「賢ちゃん!!賢ちゃん、合格だったよ!!!」と、封筒を持って俺の家にかけつける佳織。
俺は暗い表情で跪き、「ごめん、俺・・・俺・・・・・・、」と言う。
「え・・・・賢ちゃん、・・・・・まさか・・・・・・・」
佳織の声が震えている。
「賢ちゃん・・・なんか言ってよ、ねえ。ねえ!嘘でしょ!?嘘だよね!?」
「ああ。嘘だ(笑)。」
合格通知を見せる。
佳織は嬉しいんだかむかつくんだか、って感じの微妙な顔で俺を睨んで、近所中に響き渡るんじゃないかと思うほど大きな声で「賢ちゃんのバカ!!!!!!!!!!」と叫んだ。
そんなに遠いわけでもないんだが、自宅から大学まで距離があるため、俺達は部屋探しを始めた。
「ねえ、ここどう??家賃も間取りもいい感じだと思うんだけど・・・」
「俺はこっちのほうが好きかな〜」
そんなことを話しながら、俺達は雑誌を広げる。
俺達は両方の親に何もかもを話し、承諾を得た上で同じアパートで暮らすことが決まっていた。
「佳織がひとりだと心配だから丁度いい」
「賢がひとりだと外食ばかりになるから丁度いい」と、両親も大賛成。小さいうちから家族ぐるみの付き合いしててよかった・・・。
さすがに同棲まで申し出る勇気は出なかったので、できるだけ近い部屋にしようということになった。
「わぁ、ここが私の新しい部屋かぁ〜!」荷物を置いて、佳織が言う。
「まえ一回見に来ただろうが、そんな感動すんなって(笑)」と俺。
「そういうことをいわないでくださいー」と俺に詰め寄る。
「わかったわかったって。さっさと荷物片付けろよ。
俺は自分の部屋の荷物片付けてくるから。」
「は〜い。」
俺の部屋は、佳織と同じ階の、3つほど隣だ。
その日の夜、俺は佳織の部屋で、飯を食った。もちろん佳織のお手製。ロールキャベツ、鮭のムニエル、スイートポテトが、新しいテーブルに並ぶ。
「おいおい、めっちゃ豪華じゃんか。毎日こんな料理作ってたら金いくらあっても足んねーぞ?」
「今日だけに決まってるでしょ!明日からは節約生活だよ(笑)。」
これからのことについて、俺達は美味い飯を食いながら色々語り合った。
飯を食べ終わった後俺はソファーでテレビを見ながらくつろいでいると、食器洗いを終えた佳織が横に腰掛け、俺にもたれかかる。
「重い!」
「失礼な!!!」
佳織の手には、あのときの指輪が輝いている。自然と、佳織と目が合った。俺も佳織も、目をそらさない。そのまま距離はどんどん近づき、俺達はキスをする。
軽いキスだったのが次第に深くなり、そして、お互い初めてなので、ぎこちなく舌を絡めあう。
佳織は俺の首に手をまわし、俺は佳織を抱き寄せ、もっと距離を縮めた。昔と比べて大きくなった佳織の胸が、俺の体にあたる。それが余計に俺を興奮させた。
無意識に、俺は佳織の胸を触った。
「ん・・・っ」と、恥ずかしそうに声を出すが、抵抗しない。それがたまらない。
「賢・・・ちゃんっ・・・・・・」
荒く息をしながら、俺の名前を呼ぶ。
「・・・嫌か?」
「・・・・ううん、そんなことない」
俺達はまた唇を重ねた。
ねっとりとしたディープキスをしながら、俺は佳織のセーターの下に手を入れた。
ブラのうえから胸を触る。「ぃや・・・・。」と小さな声で言ったが、本気で抵抗する気はなさそうだ。
部屋は暖房で充分温かい。俺は、佳織のセーターを脱がせた。黒色のレースが佳織の大きな胸を包み込んでいた。
初めて見た佳織のオトナっぽい下着姿に、俺はかなり興奮した。下のカーペットに押し倒し、キスをしながら胸を愛撫する。
フロントホックのブラをはずすと、綺麗な胸が姿を現した。思わず俺は、ピンクの乳首にしゃぶりついた。
「あああっ賢ちゃん、恥ずかしい・・・・」
もう片方の手で乳首をコリコリと摘むと、佳織の息は一層荒くなった。
「賢ちゃん・・・賢ちゃんっ・・ぁん・・・・・・」
童貞処女コンビなので、どっちがリードするとかもなく、正直このあとどうすればいいのかもわからなかったが、とにかく佳織の可愛い声を聞きたい一心で、俺は佳織の体を愛した。
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