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3 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)20:30:19 ID:CFHDqKUf7
俺の家は田舎の農家
何も楽しみもない地域だったけど、近所同士は相当仲が良かった
当然隣同士の家なら、自然と家族単位の付き合いになっていた
そして俺の家の隣には、同い年の女の子のA子がいた
A子とは小さいころからの知り合いだった
ていうのも、俺とA子の両親、祖父母とも凄く仲がよかった
お互いの家に遊びに行ったり、一緒に食事したりしていたから、自然とA子と過ごしていた
A子はスゴク大人しい子だった
基本的に『うん』しか言わないし、何か冗談を言えばすぐに泣いてしまう子だった
それでも子供の自分は特に何も蟠りを感じることもなく、普通に遊んでいた
6 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)20:35:51 ID:CFHDqKUf7
小学生になっても二人の関係は変わらなかった
どちらかともなく家に行き、適当に遊んでいた
家族ぐるみの付き合いだったから、頻繁に飯も一緒に食べた
そんな関係だった両家族だったけど、小学3年の時にA子の母親が病気で他界した
それからA子は、前にも増して暗くて泣きやすくなった
両親からも、A子の父親からも『出来るだけA子と遊んでほしい』と言われて、俺も子供ながらに出来る限りA子を遊びに連れてった
最初の方は この世の終わりのような顔をしてたA子も、徐々に元のA子に戻って行った
7 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:01:30 ID:CFHDqKUf7
そっからA子は俺に付いて行くようになった
川に釣りに行けば一緒に行って、釣るわけでもないのに付いてきた
山に行けば体力ないのに息を切らしながらついてきた
俺が一方的にどうでもいい話をして、ただひたすらA子はそれを聞いていた
そして小学校6年の時、いつものようにA子とA子の父祖父母が俺の家に来て、一緒にご飯を食べていた
そしたら、俺の父とA子の父が一緒に遊ぶ俺とA子を見て、『俺とA子は仲がいいな。そのまま結婚してしまったらどうだ』とか言ってきた
それを聞いた両祖父母も賛成
俺は何だか すごく恥ずかしくなって全力で拒否したけど、両親がA子に『俺と結婚してくれるか?』と聞いたら、A子は恥ずかしそうにしながらも『俺くんがいいなら』と言ってしまった
そこで俺を放置して、両家族は大盛り上がりして、その日は祝賀会という名の飲み会となった
もちろん、小学生に将来の約束を本気でしてたとは思ってない
そうなれば いいな的な感じだった
それでも俺は凄く恥ずかしかったし、A子も下を向いたまま動かなくなっていた
8 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:05:23 ID:CFHDqKUf7
それから中学に上がると、A子は益々俺の後を付いてくるようになった
性格は変わらず、とても物静かだった
メガネをかけてとても地味な風貌だった
俺も戸惑いながらも、幼馴染ということもあり、A子と普段通りに接していた
中学の時に、何度かA子に聞いてみた
『あの結婚の話、本気にしてないよな?』的なこと
その度にA子は顔を赤くして俯くだけだった
そん時は、もしかして本気にしてる?とは思ったけど、どうせ大きくなったら どうでもよくなるだろと楽観視していた
9 :名無しさん :2014/04/14(月)21:07:41 ID:vhWotvUHi
釣りか本当か分からんが幼馴染か…
羨ましい…
10 :名無しさん :2014/04/14(月)21:09:09 ID:WluNd3U2a
A子が美人ではないってことにリアリティを感じる
11 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:12:53 ID:CFHDqKUf7
ところが、高校になっても、A子は俺と同じ高校に進学してきた
A子は体育以外はとても成績が良かった
それに比べて俺はろくに勉強もしてなかったから成績は悪く、何とか底辺の県立高校に進学した
A子は格段に上の高校に行けたはずなのに、先生の反対を押し切って俺の行く高校に入学した
でも当時の俺にしてみれば、何だか妙に腹立たしかった
俺が必死に自分なりに勉強して高校にやっと受かったのに、A子は普段通りにしていて合格したことが悔しかった
もちろんそれは普段から勉強してなかった俺のせいだった
本当にしょうもないプライドだった
でも、当時の俺はそれがとても気に触っていた
高校でも俺にしょっちゅうついて来てて、時々冷やかされもした
当時の多感な俺にはそれが耐えられなかった
A子がいるからという理由で誰も女の子が話しかけて来なかった
A子は幼馴染とはいえ、俺だって他の女の子と話したかったし、友達もA子がいるからと色々遠慮しているところもあった
とても窮屈な気分だった
12 :名無しさん :2014/04/14(月)21:17:52 ID:hMwe8v9oc
お前が他の女の子に話しかけられなかったのはA子のせいじゃなくね?
別に彼女いようが普通に来たり話したりするだろ
13 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:23:18 ID:CFHDqKUf7
>>12
もちろんそうだったと思う
でも、当時の俺は全部A子のせいにしてしまったんだよ
そして高校2年の途中で、俺は学校帰りにとうとうA子を責めてしまった
『いちいち俺の後をついてくるな』
『お前のせいでいつも恥ずかしい思いをしている』
『小学校の時に適当に親が言ったことを守ってバカじゃないのか』
そんなことを怒鳴りつけた
A子は涙を流しながら『ごめんなさい』と言っていた
今考えれば、俺は最低だった
頭のよくない高校に、優等生のA子は学校では浮いていた
俺以外に友達もほとんどいないし、色々不安だったと思う
それなのに俺はA子を拒絶して、罵倒して、突き離した
本当に最低だったと思う
だけど、当時の俺はそんなことなんて考えもしなかった
ただ自由な生活が欲しかった
それを聞いた両親にも責められた
A子の父親にも責められたし、A子の年の離れた兄にも責められた
それがとても歯痒かったし、頭に来たから俺もいつも言い返して口論になっていた
その度にA子は俺に謝っていたけど、その姿すらも癪に触った
それから、俺とA子は疎遠になった
ていうよりも、俺が一方的にA子を無視していた
そして、高校卒業と同時に、親と喧嘩別れのような状態で家を飛び出した
A子は最後に俺に何かを言おうとしてたけど、俺はそんなこと聞く耳なんて持たなかった
とにかくそこの暮らしの全部が最悪に思えていた
だから、離れた都会で一人暮らしをして、高校の時の友人のツテで仕事に就いた
14 :名無しさん :2014/04/14(月)21:27:04 ID:csJ89hhqW
ふむふむ
15 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:28:31 ID:CFHDqKUf7
一人暮らしを始めたら、それはとても自由な生活だった
誰にも文句を言われることもない
仕事にさえ行けば、好きな時間に眠れて、休みの日には好きなことが出来た
それまで抑え付けられていた色々なことを、一気に吐き出した
女とも遊んだ
男友達ともバカやった
酒を毎日飲んで、ギャンブルもして、タバコも吹かしていた
そして友人の紹介で、彼女まで出来た
彼女に夢中になった俺は、毎日メールやらでやり取りをして、遊びに行って、飲んで騒いで、サルみたいにセクロスした
毎日が自由だった
とても満ち足りた生活だった
17 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:36:09 ID:CFHDqKUf7
そんな荒れた生活を続けていた俺は、いつの間にか24歳になっていた
そしてその年の春、会社に新しい上司が来た
俺の直属の上司だった
だけどこの男が、まるでパワハラの塊のような男だった
十分な量の仕事を捌いていたのに、『仕事が遅い。使えない奴』と罵られた
ほんのちょっとしたミスでも、『こんなミスをするのは考えられない。辞めてしまえ』と怒鳴られた
その上司は、普段はとてもいい人面をする奴だったから、周囲の評価は凄くよかった
でも、一度俺と二人になれば、毎日基地外のように罵倒してきた
俺は必死に耐えていた
その上司は、上の方にはこれでもかと言わんばかりに媚を売っていたから気に入られていて、俺が何を言っても掻き消されることは分かっていた
精神的にまいっていた俺の唯一の救いは、最愛の彼女だった
彼女は俺を毎日励ましてくれていた
だから俺も思う存分それに甘えていた
そんなある日、俺が家に帰ると、彼女が俺に仕事を紹介してくれた友人と浮気していた
18 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:42:03 ID:CFHDqKUf7
その友人は、俺の中では親友だった
仕事の愚痴も言い合って、一緒にバカやって、一生の友達だと俺は思っていた
彼女には、心底ホレていた
結婚することも考え始めていたし、幸せにしようとか思っていt
そんな親友と、俺の最愛の彼女が、ベッドの上で裸で激しく抱き合っていた
当然俺は激怒して、二人を問い詰めた
でも二人は、まるで開き直ったかのような態度をとった
友人だった男は、『彼女を引き留められなかったお前が悪い』と言ってきた
彼女だった女は、『アンタと一緒にいても全く面白くないし、セクロスも友達の方がずっと上手い』と言ってきた
そして、二人はニヤニヤ笑いながら、『俺達、今日から付き合うから』と言って部屋から出て行った
俺は一人残された部屋で泣いた
でも、泣くことしか出来なかった
俺は一度に、親友と彼女を失ってしまった
そのショックはかなりのもので、泣くこと以外に何も出来なかった
19 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:48:42 ID:CFHDqKUf7
それから俺に残されたのは、ただ苦痛の日々だった
仕事中の上司のパワハラは更にエスカレートしていった
それでも必死に耐えて仕事をしていた
家に帰れば抜け殻のように呆然としていた
体重もどんどん落ちて行った
それでも生活のために仕事に行き続けた
しかし、そんなある日、いつものように上司から罵倒されていると、その上司が怒鳴って来た
『お前がそんなにダメだから、女を取られるんだよ』
たぶん、噂か何かで聞いたんだと思う
それを言われた瞬間、俺の中で何かが切れた
そして、咄嗟にその上司の顔を思い切り殴った
20 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:58:22 ID:CFHDqKUf7
当然、会社で俺が上司を殴ったのは大問題になった
上司は警察に通報すると騒いでいたけど、会社としては警察沙汰はマズかったようだ
俺は退職金辞退の自主退職という名目で、会社をクビになった
会社を放り出された俺は、何とか仕事を探しながらバイトを掛け持ちした
でも、仕事は中々見つからなかった
バイトを掛け持ちしたとしても生活は苦しくて、少ししかなかった貯金は減って行った
友人と遊びに行くこともなくなり、疎遠になった
それでも必死に仕事を探したけど、現実は甘くなかった
何度面接しても就職は出来なかった
もしかしたら、前の会社に調査をしたのかもしれない
そりゃ、上司を殴り飛ばした男なんて誰も雇うはずもなかった
そんな中、駅にいた時に、気が付けばポケットに入れていた財布がなくなっていた
スラれたのか落としたのかは分からない
でもその財布には、その月の貴重な生活費が入っていた
俺は祈るように探し回った
そして、男子トイレの大便器の中に財布はあった
回収して確認したら、財布の中の金は、全部綺麗に抜き取られていた
俺は財布を洗いながら、ふと鏡で自分の顔を見てみた
俺、泣いてた
自分では気づかなかったけど、涙流してた
何もかもが嫌になって、俺は自殺しようと思い立った
21 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)22:06:31 ID:CFHDqKUf7
部屋に帰ると、ロープを持って、深夜の公園の木の袂に立った
それを木の枝にひっかけて輪っかを作り、持って来た椅子を踏み台にして首を括った
足元には友人だった男、彼女だった男、上司への恨みを書き綴った遺書を置いた
後は椅子を蹴り倒せば楽になるはずだった
でも、最後の最後で椅子を蹴れなかった
何度も勇気を出しても、どうしても椅子を蹴れなかった
椅子に乗ったまま何度も足を動かしていたら、椅子が倒れた
その瞬間、ロープが一気に首を締めた
けど、ロープをかけた木の枝が細すぎたみたいで、あっさりと折れてしまい、俺は地面に倒れた
咽ながら、俺の頭に浮かんだことは、死への恐怖だった
死のうと思ったのに死にたくないと頭の中で叫んでいた
なんだか無性にそれが悲しくて、悔しくて、情けなくて、誰もいない公園で泣いた
泣きまくった
フラフラとしながら家に帰り、ロープと破った遺書を捨てた
それから数日、俺はバイトをサボって家で呆然としていた
そんな時、ふと頭の中に地元の風景が浮かんだ
俺は残りわずかだった金をポケットに突っこんで、無精ひげを伸ばしたまま電車に乗って地元を目指した
24 :名無しさん :2014/04/14(月)22:19:19 ID:VZYrgTp75
>>21
彼女だった男…?
26 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)22:20:00 ID:CFHDqKUf7
>>24
ミスだ
彼女だった女だよ
22 :名無しさん :2014/04/14(月)22:10:19 ID:csJ89hhqW
おぅ…
23 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)22:14:55 ID:CFHDqKUf7
地元の田舎の風景は全く変わってなかった
田んぼばかりの土地
ポツポツ建つ家
当時25歳になっていた俺からすれば、7年ぶりの地元の風景だった
ただ、来た理由はなかった
実家に帰れば、たぶん両親から叩き出されると思った
かと言って知り合いの家に行っても、どうせすぐに両親に連絡されることは目に見えていた
そんな俺の頭に浮かんだのは、A子だった
A子なら、もしかしたら俺を待っててくれてるかもしれない
いや、きっと待ってる
A子と結婚すれば、こんな糞みたいな生活から解放されると思った
とても自分勝手な考えだった
本当に最低最悪の考えだった
自分から放置したA子を、今さら利用しようとした
好きだから会いたいとかじゃなくて、ただ自分の身が可愛くてA子を利用しようとした
でも、当時の俺はそれに罪悪感なんて感じもせずに、A子の家を目指した
幸い俺の風貌はぼさぼさの頭に無精ひげ、げっそりとした顔とかなり変わっていたから、よく見ないと俺だとは分からなかった
誰にも気づかれることなく、A子の家に辿り着いた
>>次のページへ続く
3 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)20:30:19 ID:CFHDqKUf7
俺の家は田舎の農家
何も楽しみもない地域だったけど、近所同士は相当仲が良かった
当然隣同士の家なら、自然と家族単位の付き合いになっていた
そして俺の家の隣には、同い年の女の子のA子がいた
A子とは小さいころからの知り合いだった
ていうのも、俺とA子の両親、祖父母とも凄く仲がよかった
お互いの家に遊びに行ったり、一緒に食事したりしていたから、自然とA子と過ごしていた
A子はスゴク大人しい子だった
基本的に『うん』しか言わないし、何か冗談を言えばすぐに泣いてしまう子だった
それでも子供の自分は特に何も蟠りを感じることもなく、普通に遊んでいた
6 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)20:35:51 ID:CFHDqKUf7
小学生になっても二人の関係は変わらなかった
どちらかともなく家に行き、適当に遊んでいた
家族ぐるみの付き合いだったから、頻繁に飯も一緒に食べた
そんな関係だった両家族だったけど、小学3年の時にA子の母親が病気で他界した
それからA子は、前にも増して暗くて泣きやすくなった
両親からも、A子の父親からも『出来るだけA子と遊んでほしい』と言われて、俺も子供ながらに出来る限りA子を遊びに連れてった
最初の方は この世の終わりのような顔をしてたA子も、徐々に元のA子に戻って行った
7 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:01:30 ID:CFHDqKUf7
そっからA子は俺に付いて行くようになった
川に釣りに行けば一緒に行って、釣るわけでもないのに付いてきた
山に行けば体力ないのに息を切らしながらついてきた
俺が一方的にどうでもいい話をして、ただひたすらA子はそれを聞いていた
そして小学校6年の時、いつものようにA子とA子の父祖父母が俺の家に来て、一緒にご飯を食べていた
そしたら、俺の父とA子の父が一緒に遊ぶ俺とA子を見て、『俺とA子は仲がいいな。そのまま結婚してしまったらどうだ』とか言ってきた
それを聞いた両祖父母も賛成
俺は何だか すごく恥ずかしくなって全力で拒否したけど、両親がA子に『俺と結婚してくれるか?』と聞いたら、A子は恥ずかしそうにしながらも『俺くんがいいなら』と言ってしまった
そこで俺を放置して、両家族は大盛り上がりして、その日は祝賀会という名の飲み会となった
もちろん、小学生に将来の約束を本気でしてたとは思ってない
そうなれば いいな的な感じだった
それでも俺は凄く恥ずかしかったし、A子も下を向いたまま動かなくなっていた
8 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:05:23 ID:CFHDqKUf7
それから中学に上がると、A子は益々俺の後を付いてくるようになった
性格は変わらず、とても物静かだった
メガネをかけてとても地味な風貌だった
俺も戸惑いながらも、幼馴染ということもあり、A子と普段通りに接していた
中学の時に、何度かA子に聞いてみた
『あの結婚の話、本気にしてないよな?』的なこと
その度にA子は顔を赤くして俯くだけだった
そん時は、もしかして本気にしてる?とは思ったけど、どうせ大きくなったら どうでもよくなるだろと楽観視していた
9 :名無しさん :2014/04/14(月)21:07:41 ID:vhWotvUHi
釣りか本当か分からんが幼馴染か…
羨ましい…
10 :名無しさん :2014/04/14(月)21:09:09 ID:WluNd3U2a
A子が美人ではないってことにリアリティを感じる
11 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:12:53 ID:CFHDqKUf7
ところが、高校になっても、A子は俺と同じ高校に進学してきた
A子は体育以外はとても成績が良かった
それに比べて俺はろくに勉強もしてなかったから成績は悪く、何とか底辺の県立高校に進学した
A子は格段に上の高校に行けたはずなのに、先生の反対を押し切って俺の行く高校に入学した
でも当時の俺にしてみれば、何だか妙に腹立たしかった
俺が必死に自分なりに勉強して高校にやっと受かったのに、A子は普段通りにしていて合格したことが悔しかった
もちろんそれは普段から勉強してなかった俺のせいだった
本当にしょうもないプライドだった
でも、当時の俺はそれがとても気に触っていた
高校でも俺にしょっちゅうついて来てて、時々冷やかされもした
当時の多感な俺にはそれが耐えられなかった
A子がいるからという理由で誰も女の子が話しかけて来なかった
A子は幼馴染とはいえ、俺だって他の女の子と話したかったし、友達もA子がいるからと色々遠慮しているところもあった
とても窮屈な気分だった
12 :名無しさん :2014/04/14(月)21:17:52 ID:hMwe8v9oc
お前が他の女の子に話しかけられなかったのはA子のせいじゃなくね?
別に彼女いようが普通に来たり話したりするだろ
13 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:23:18 ID:CFHDqKUf7
>>12
もちろんそうだったと思う
でも、当時の俺は全部A子のせいにしてしまったんだよ
そして高校2年の途中で、俺は学校帰りにとうとうA子を責めてしまった
『いちいち俺の後をついてくるな』
『お前のせいでいつも恥ずかしい思いをしている』
『小学校の時に適当に親が言ったことを守ってバカじゃないのか』
そんなことを怒鳴りつけた
A子は涙を流しながら『ごめんなさい』と言っていた
今考えれば、俺は最低だった
頭のよくない高校に、優等生のA子は学校では浮いていた
俺以外に友達もほとんどいないし、色々不安だったと思う
それなのに俺はA子を拒絶して、罵倒して、突き離した
本当に最低だったと思う
だけど、当時の俺はそんなことなんて考えもしなかった
ただ自由な生活が欲しかった
それを聞いた両親にも責められた
A子の父親にも責められたし、A子の年の離れた兄にも責められた
それがとても歯痒かったし、頭に来たから俺もいつも言い返して口論になっていた
その度にA子は俺に謝っていたけど、その姿すらも癪に触った
それから、俺とA子は疎遠になった
ていうよりも、俺が一方的にA子を無視していた
そして、高校卒業と同時に、親と喧嘩別れのような状態で家を飛び出した
A子は最後に俺に何かを言おうとしてたけど、俺はそんなこと聞く耳なんて持たなかった
とにかくそこの暮らしの全部が最悪に思えていた
だから、離れた都会で一人暮らしをして、高校の時の友人のツテで仕事に就いた
14 :名無しさん :2014/04/14(月)21:27:04 ID:csJ89hhqW
ふむふむ
15 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:28:31 ID:CFHDqKUf7
一人暮らしを始めたら、それはとても自由な生活だった
誰にも文句を言われることもない
仕事にさえ行けば、好きな時間に眠れて、休みの日には好きなことが出来た
それまで抑え付けられていた色々なことを、一気に吐き出した
女とも遊んだ
男友達ともバカやった
酒を毎日飲んで、ギャンブルもして、タバコも吹かしていた
そして友人の紹介で、彼女まで出来た
彼女に夢中になった俺は、毎日メールやらでやり取りをして、遊びに行って、飲んで騒いで、サルみたいにセクロスした
毎日が自由だった
とても満ち足りた生活だった
17 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:36:09 ID:CFHDqKUf7
そんな荒れた生活を続けていた俺は、いつの間にか24歳になっていた
そしてその年の春、会社に新しい上司が来た
俺の直属の上司だった
だけどこの男が、まるでパワハラの塊のような男だった
十分な量の仕事を捌いていたのに、『仕事が遅い。使えない奴』と罵られた
ほんのちょっとしたミスでも、『こんなミスをするのは考えられない。辞めてしまえ』と怒鳴られた
その上司は、普段はとてもいい人面をする奴だったから、周囲の評価は凄くよかった
でも、一度俺と二人になれば、毎日基地外のように罵倒してきた
俺は必死に耐えていた
その上司は、上の方にはこれでもかと言わんばかりに媚を売っていたから気に入られていて、俺が何を言っても掻き消されることは分かっていた
精神的にまいっていた俺の唯一の救いは、最愛の彼女だった
彼女は俺を毎日励ましてくれていた
だから俺も思う存分それに甘えていた
そんなある日、俺が家に帰ると、彼女が俺に仕事を紹介してくれた友人と浮気していた
18 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:42:03 ID:CFHDqKUf7
その友人は、俺の中では親友だった
仕事の愚痴も言い合って、一緒にバカやって、一生の友達だと俺は思っていた
彼女には、心底ホレていた
結婚することも考え始めていたし、幸せにしようとか思っていt
そんな親友と、俺の最愛の彼女が、ベッドの上で裸で激しく抱き合っていた
当然俺は激怒して、二人を問い詰めた
でも二人は、まるで開き直ったかのような態度をとった
友人だった男は、『彼女を引き留められなかったお前が悪い』と言ってきた
彼女だった女は、『アンタと一緒にいても全く面白くないし、セクロスも友達の方がずっと上手い』と言ってきた
そして、二人はニヤニヤ笑いながら、『俺達、今日から付き合うから』と言って部屋から出て行った
俺は一人残された部屋で泣いた
でも、泣くことしか出来なかった
俺は一度に、親友と彼女を失ってしまった
そのショックはかなりのもので、泣くこと以外に何も出来なかった
19 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:48:42 ID:CFHDqKUf7
それから俺に残されたのは、ただ苦痛の日々だった
仕事中の上司のパワハラは更にエスカレートしていった
それでも必死に耐えて仕事をしていた
家に帰れば抜け殻のように呆然としていた
体重もどんどん落ちて行った
それでも生活のために仕事に行き続けた
しかし、そんなある日、いつものように上司から罵倒されていると、その上司が怒鳴って来た
『お前がそんなにダメだから、女を取られるんだよ』
たぶん、噂か何かで聞いたんだと思う
それを言われた瞬間、俺の中で何かが切れた
そして、咄嗟にその上司の顔を思い切り殴った
20 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)21:58:22 ID:CFHDqKUf7
当然、会社で俺が上司を殴ったのは大問題になった
上司は警察に通報すると騒いでいたけど、会社としては警察沙汰はマズかったようだ
俺は退職金辞退の自主退職という名目で、会社をクビになった
会社を放り出された俺は、何とか仕事を探しながらバイトを掛け持ちした
でも、仕事は中々見つからなかった
バイトを掛け持ちしたとしても生活は苦しくて、少ししかなかった貯金は減って行った
友人と遊びに行くこともなくなり、疎遠になった
それでも必死に仕事を探したけど、現実は甘くなかった
何度面接しても就職は出来なかった
もしかしたら、前の会社に調査をしたのかもしれない
そりゃ、上司を殴り飛ばした男なんて誰も雇うはずもなかった
そんな中、駅にいた時に、気が付けばポケットに入れていた財布がなくなっていた
スラれたのか落としたのかは分からない
でもその財布には、その月の貴重な生活費が入っていた
俺は祈るように探し回った
そして、男子トイレの大便器の中に財布はあった
回収して確認したら、財布の中の金は、全部綺麗に抜き取られていた
俺は財布を洗いながら、ふと鏡で自分の顔を見てみた
俺、泣いてた
自分では気づかなかったけど、涙流してた
何もかもが嫌になって、俺は自殺しようと思い立った
21 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)22:06:31 ID:CFHDqKUf7
部屋に帰ると、ロープを持って、深夜の公園の木の袂に立った
それを木の枝にひっかけて輪っかを作り、持って来た椅子を踏み台にして首を括った
足元には友人だった男、彼女だった男、上司への恨みを書き綴った遺書を置いた
後は椅子を蹴り倒せば楽になるはずだった
でも、最後の最後で椅子を蹴れなかった
何度も勇気を出しても、どうしても椅子を蹴れなかった
椅子に乗ったまま何度も足を動かしていたら、椅子が倒れた
その瞬間、ロープが一気に首を締めた
けど、ロープをかけた木の枝が細すぎたみたいで、あっさりと折れてしまい、俺は地面に倒れた
咽ながら、俺の頭に浮かんだことは、死への恐怖だった
死のうと思ったのに死にたくないと頭の中で叫んでいた
なんだか無性にそれが悲しくて、悔しくて、情けなくて、誰もいない公園で泣いた
泣きまくった
フラフラとしながら家に帰り、ロープと破った遺書を捨てた
それから数日、俺はバイトをサボって家で呆然としていた
そんな時、ふと頭の中に地元の風景が浮かんだ
俺は残りわずかだった金をポケットに突っこんで、無精ひげを伸ばしたまま電車に乗って地元を目指した
24 :名無しさん :2014/04/14(月)22:19:19 ID:VZYrgTp75
>>21
彼女だった男…?
26 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)22:20:00 ID:CFHDqKUf7
>>24
ミスだ
彼女だった女だよ
22 :名無しさん :2014/04/14(月)22:10:19 ID:csJ89hhqW
おぅ…
23 :ダメ男◆n8dlh1jn0FWE :2014/04/14(月)22:14:55 ID:CFHDqKUf7
地元の田舎の風景は全く変わってなかった
田んぼばかりの土地
ポツポツ建つ家
当時25歳になっていた俺からすれば、7年ぶりの地元の風景だった
ただ、来た理由はなかった
実家に帰れば、たぶん両親から叩き出されると思った
かと言って知り合いの家に行っても、どうせすぐに両親に連絡されることは目に見えていた
そんな俺の頭に浮かんだのは、A子だった
A子なら、もしかしたら俺を待っててくれてるかもしれない
いや、きっと待ってる
A子と結婚すれば、こんな糞みたいな生活から解放されると思った
とても自分勝手な考えだった
本当に最低最悪の考えだった
自分から放置したA子を、今さら利用しようとした
好きだから会いたいとかじゃなくて、ただ自分の身が可愛くてA子を利用しようとした
でも、当時の俺はそれに罪悪感なんて感じもせずに、A子の家を目指した
幸い俺の風貌はぼさぼさの頭に無精ひげ、げっそりとした顔とかなり変わっていたから、よく見ないと俺だとは分からなかった
誰にも気づかれることなく、A子の家に辿り着いた
>>次のページへ続く