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私が初恋をつらぬいた話
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54 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:27:26.30 ID:L9GcuA1Wi
え、やめてよ
地獄ってえええええ




55 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:28:09.32 ID:LUqPOmqkP
(´;ω;`)思春期なのに…






56 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:28:16.99 ID:+beSXCVE0

母は18歳で未婚のまま私を産み、今まで水商売で家計を支えてき
た。
支えてきた…とはいいつつも、

家は母の父母から相続した古いながらも一軒家だったので、実質
かかっているお金は大したことは無かったらしい。

私が中学生になった頃には、週に1.2回帰ってきて、当面の生活費
を無造作にテーブルに置いてはまた出て行く…という生活を送っ
ていた。

どうせ男のところにでも行っているのだろう…薄々はそう感じて
いたが、まさか急に再婚などと言われるとは思ってもいなかった。




男を紹介された次の日。

男が日中仕事に出かけたのを見計らうと、私は籍を入れるつもり
なら構わないが、男と養子縁組をすることだけは絶対に嫌だと母
に抗議をした。

名字が変わるのが嫌だった訳じゃなく、ただ単純にあの薄気味悪
い男の名字を名乗る事も、戸籍に入る事も嫌だったからだ。

私が一気にまくし立てると、母はニヤニヤしながらあっそう?じゃ
あそうするわ♪とだけ言った。



家庭環境は変わったが、それからも先生とは何も変わらずに、普
通にメールをしていた。

もっと早く相談していれば良かったのだが、その当時の私は自分
の汚い家庭環境を見られるのが何よりも嫌で、何も変わりない素
振りをしていたのだった。










58 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:30:17.30 ID:+beSXCVE0
男が一緒に暮らすようになって数ヵ月後。
早いものでもう春休みに入っていた。


母はどこかに出かけ、私はバイトが休み。男も休みだったみたい
で、朝からずーっと家に居た。


いつもは朝起きるとリビングに行き、軽く朝食を摂りながらテレ
ビを見たりして過ごすのだが、その日は朝から男が家に居た為、
私はずっと部屋に閉じこもっていた。

その日に限って友達がつかまらず、部屋で何もする事もなくボーっ
としていると、不思議と睡魔が襲ってくる。
ベットにつっぷしていると、私はいつの間にか寝入ってしまっていた。



眠ってからどれ位か経った時、私は体に感じる違和感で薄っすら
と目を覚ました。

「…?」

…誰かが私の体を撫で回している。
恐怖と混乱が、私を襲った。

「ハァ…ハァハァ…」

気味の悪い息遣いだけが、かすかに聞こえてくる。
瞬間、あの男が私の背面を触れるか触れないか位の手付きで弄っ
ているのだ、と気がついた。



恐怖と気持ち悪さで、すぐにでもその場を飛び出したかった。
しかし、当時の私は何故か、寝たふりをしなきゃいけない!と咄
嗟に思い込んだ。
ただ漠然と、起きてるとわかったら大変な事になる…そういう考
えしか浮かんでこなかったのだ。

嫌悪感を必死に堪え、ひたすら寝たフリをしてやり過ごす。
あまりの吐き気に限界を迎えた頃、玄関から母が帰ってきた声が
した。


すると、男の手は一瞬ビクっとし、物音を立てないように静かに
部屋から出て行った。


私は例え様のない感情を抑えることができず、必死に声を押し殺
して泣いた。






59 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:32:40.09 ID:+beSXCVE0
高校3年が始まる。

私はあの事件があって以来、夜家で眠ることが無くなっていた。
正確には、家で一夜を過ごすという事が出来なくなっていた。


学校やバイト、友達との約束が終わると、お風呂と必要最低限の
荷物だけを取りに帰って、夜間は体を休められそうな場所を見つ
けてはジッと座って朝まで過ごした。

友人達の家にも泊めてもらった事もあったが、やはり迷惑になる
事を考えると、次もまた甘えるということは出来なかった。

余りにも田舎だったため、夜9時を過ぎた頃には外に人出は無く
なり、おまわりさんが見回りをするということも無かった。私は
噂にならないように必死に身を潜めて、毎日ジッと耐え続けた。


先生との毎日続けていたメールも、いつのまにか2.3日に一回返事
を返す位になってしまっていた。

心がボロボロになっていくウチに、何故か先生に迷惑がかかるよ
うな気がして、不本意に返事を減らしていたのだった。

表向きには何事もなく過ごし、一歩裏に帰るとそんな生活を送っ
ているという心労は、並大抵のものじゃなかった。




そんな生活をひと月ほど送ったある日、それでも体力には限界が
やってくる。

その日のバイトを終えた午後8時頃。

いつものようにネグラを探していると、クラクラと立ちくらみが
する。気合を入れて歩こうとはするのだが、体にまったく力が入
らない。

私は限界を感じ、半ば無意識に家に帰ると、即自室のベッドに潜
り込んだ。






61 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:34:50.85 ID:+beSXCVE0
寝付いてどれくらいたったかわからない。
ただ、多分そんなに時間がたたないうちに、あの男は部屋にやっ
てきた。

体を這い回る手の動きで目が覚める。
私はまた、猛烈な嫌悪感に襲われた。


そうか、今日もやっぱり母は居なかったんだな…
半ば考えるのを拒否し始めた頭で、ボーっとそんな事を考える。
母はお腹が大きいのにもかかわらず、相変わらず週に何日かはス
ナックにバイトに行っていた。


このまま私が我慢をすれば、とりあえず休めるのかな…

覚悟を決めかけたその時、男の手は私の服の中に滑り込んできた。





その瞬間、一瞬だけ先生の顔が頭をよぎる。

「いやああああああああああああああああああああ
あ!!!!!!!」

実際にはこんな女らしい叫び声じゃなく、もっと獣に近いものだっ
たかもしれない。私は男を蹴るように突き飛ばした。

一瞬だけ男の体が離れる。
怒りと興奮で頭はクラクラする。

息を荒げたまま起き上がろうとすると、男はニヤっと笑ってまた
私に襲い掛かった。

どのように体をジタバタさせたか解らない。

ただ、私の服を剥ぎ取ろうとする男の手を、必死で引き剥がそう
としていたのだけは覚えている。ひたすら男の体を蹴り上げてい
た私の足が何発目かでようやくクリーンヒットし、男は小さく呻
きながらかがみこんだ。

今しかない…!

私は机においてあったカバンを手にすると、一目散に家から飛び
出した。とにかく必死で走って、近所にあった当時はもう使われ
ていない病院跡地に、身を隠した。






62 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:36:19.55 ID:+beSXCVE0

建物の影に隠れて息を整えると、とたんに虚しさが襲ってくる。

どうして私がこんな目に…
どうして私の親はあんななんだ…
どうして…どうして…

もう頭の中は、どうして?しか浮かんでこなかった。



一通りどうして問答をした後、ぼーっとした頭でカバンをまさぐ
り携帯電話を取る。

「せんせいたすけて」

私はほぼ無心で、堺先生にメールを送った。
メールを送った瞬間、涙が溢れてくる。
携帯を握り締めながら泣いていると、先生からの返事はすぐに返っ
てきた。

「どうしました?」

文字なのに話しかけられているような気がして、私はまた息が詰
まった。

「もうやだ」

呼吸にならない呼吸のせいで、私はその一文しか送れなかった。
深呼吸を繰り返していると、またすぐ携帯が鳴る。

「090-・・・・・・」

本文には携帯番号らしき数字だけが綴られていた。
私は止め方のわからない深呼吸を繰り返しながら、その番号を押
した。


ワンコールも鳴らないうちに、先生は電話に出た。






64 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:37:49.60 ID:+beSXCVE0
「もしもし!?」

受話器の向こうから、先生の声がする。

「せんせい…」
「どうしたの?なにがあったの?」
「せんせい…………」

涙が溢れて、上手く言葉がつなげない。

「わかった、落ち着いて……今家にいるの?」
「…家にいない…そとにいる」

「外ってどこ?一人で居るの?」
「〇〇病院の…所で……うん、ひとり」

「〇〇病院にいるのね?」
「…うん…」

「わかった、今から行くから絶対にそこで待ってて。いい?わかっ
た?絶対に動かないでそこで待ってて!」

先生はそういうと電話を切った。







65 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:39:31.74 ID:+beSXCVE0
切れた電話を握りながら、深呼吸を繰り返す。
呼吸こそ乱れていたものの、涙は止まり、私はその場に座り込ん
だままぼーっとしていた。

風や草の音に耳を傾け、何も考えられずに座っていると、車の音
が徐々に近づいてくる。
近くで停まったな…と思っていると、また携帯が鳴った。


「もしもし?今〇〇病院に着いたんだけど、どこにいるの?」

先生の声だ。

「…病院の影にいます」
「影…?……今、僕が見える?」

身を乗り出して病院の正面入り口辺りを見ると、堺先生がキョロ
キョロしながら立っていた。

「…見えます」
「よかった。じゃあこっちに出てこれるかな?」

私は携帯を耳に当てながら一生懸命立ち上がると、フラフラしな
がら先生の方に歩いていった。


私に気が付いた先生が、凄く驚いているのがわかった。


家から一目散に逃げた私の恰好は、引っ張られてヨレヨレになり
所々破れたTシャツに、砂だらけになった短パン。

その上裸足で頭はボサボサ。
薄明かりの下の私は、幽霊の様だったことだろう。

先生はヨロヨロ歩く私に駆け寄ると、さっと肩を支えた。

そして次の瞬間、フワッとした感覚があったと思うと、私は先生
に俗にいうお姫様抱っこをされていた。

先生は、完全に脱力した状態の私を器用に車の後部座席に乗せる
と、

「狭いけど、ちょっとだけ我慢してね」

と、車を走らせた。
泣き疲れたからか、それとも先生に会えた安心感からか、私は横
になりながらウトウトしていた。





66 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:41:15.31 ID:+beSXCVE0

「渚さん、起きてる?」

声をかけられて、小さくハイと返事をする。
気がついたら車は停まっていた。

「ちょっと待っててね。」

そう言って先生は車から降りた。
ここはどこなんだろう…横になったままボーっと考えていると、
先生が後部座席のドアを開けた。

「起き上がれる?」

小さく頷いて起き上がった私の体を少しだけ引っ張ると、先生は
ヨイショっと言い、また私を抱っこした。乱暴に体でドアを閉め
る音がする。

見慣れない場所に目を凝らすと、目の前に小さなマンションが見
えた。
どうやらココは、このマンションの駐車場だったらしい。

先生は一階の一室の扉を空け、私を玄関に座らせると、玄関の鍵
をそーっと閉めた。



「…鍵…」

先生がボソッと呟いたのが聞こえて、私は首をかしげた。

「…家の鍵閉めないで、出てっちゃってたみたい…」

先生が恥ずかしそうに頭をポリポリかいたのを見て、私はようや
く少しだけ笑った。






67 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:42:30.54 ID:L9GcuA1Wi
先生かっこよすぎる




68 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:43:01.30 ID:+beSXCVE0

「あ…ちょ、ちょっと待ってね。」

先生は一瞬だけ私をじっと見ると、何か焦ったようにそう言って、
奥の部屋にバタバタと入っていった。

しばらくガタガタと物音がしていたかと思うと、手に何枚かの服
を持って戻ってきた。

玄関横の引き戸を開ける。

「サイズ合わないと思うけど…とりあえず着替えておいで。」


そう言われて初めて、私は自分の恰好が凄い事になっているのに
気がついた。
ボロボロになったTシャツから、お腹やブラジャーが覗いている。
私は恥ずかしくなって、慌てて腕で上半身を隠した。

「あぁ!ごめんなさい!俺、あっちにいますから!」

先生はまた慌てて奥の部屋に引っ込んで行った。


あれ?先生今、俺って言った?

少し驚きつつ、ヨロヨロしながら立ち上がると、私は開けられた
引き戸の中に移動した。
物が異常に少ない、綺麗に整頓された洗面脱衣所だった。

先生に渡された服に着替える。
少し大きな長袖のTシャツに、少し長めのハーフパンツ。
何か少し不思議な気分になりながら、今まで来ていた洋服を畳む
と、私は先生に声をかけた。

「あの…先生。」

廊下の奥、部屋を仕切る扉の向こうから、先生はハイと返事をし
た。

「足と…できれば、顔を洗いたいです…。」
「あぁ!そうですよね!…そっちに行っても大丈夫ですか?」

私がハイと返事を返すと、先生はそーっと扉を開けて入って来た。
何だかちょっと気まずそうに私の横をすり抜けると、タオルタオ
ル…と小さく呟きながら洗面所の棚をあさる。

「一枚で足りますか?」
「はい?」
「タオル…」
「あぁ、はい大丈夫です、足ります。」

私が慌ててうなずくと、先生はニコッと笑って今度は浴室の扉を
あける。蛇口を捻ってしばらく手を流水にさらし、ウンっと小さ
くうなずくと、

「どうぞ」

と言って、廊下に戻った。







>>次のページへ続く


 

 

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