27 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:46:15.87 ID:wvRdY72E0
当日。
エリは宣言通り彼氏さんと一緒にきた。
僕の家は両親が不在がちなので そういった心配はないけど、友達
をあげるってはじめての事だったので結構緊張した。
エリは どうやら彼氏と同じ高校(僕が予定してた高校よりもランク
がうえだった)に行きたいらしく、それで思い悩んでいたそうだ。
確かにエリは相当頭が悪かったから、納得してしまった。
彼氏のヤマオカ(仮名)くんは無口だったけど 冷たいというわけじゃ
なくて、喋るのが苦手なんだろうな、という印象だった。僕も無
口なほうだったけど、その分エリが賑やかだったのでちょうどよ
かった。
28 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:51:05.44 ID:wvRdY72E0
物覚えが悪いことは知ってたけど、その日のエリ熱心に覚えよう
としてた。ヤマオカくんも一生懸命わかりやすく言葉を選んでた。
その日から毎週土日のどっちかはエリ達が僕の家にきて勉強する
習慣ができた。たまに彼氏が予定あってエリが1人でくることもあっ
たけど、一応 僕の家も兄弟がいるので そこは毎回、変に緊張した。
肉親に友達見られるのも変な感じだった。僕は普段から見てるの
に。
29 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:56:38.55 ID:wvRdY72E0
その日、兄弟が出かけていたので居間で勉強してたらエリがそわ
そわして落ち着かない雰囲気だった。
「どうしたの?」
「うーん、なんか、落ち着かないなって。なんでだろう…」
きょろきょろしながらエリが答えを探す。
僕の家は両親が不在がちで、家を使う頻度も低めなので最低限の
家具しかなかった。小5の時に引っ越したのもあって、居間には食
卓、冷蔵庫、食器棚、テーブル、ソファ、テレビ、そして電話を
おく小さな棚くらいだった。
僕は見慣れてたけど、エリはそうでもなかったらしい。
「物が少なくて落ち着かない」とエリがこぼした。
30 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:59:16.95 ID:wvRdY72E0
そういえば僕の部屋に入った時も、机とベッドしかないのを見て
「ものが無いんだね」と言ってた。普通の家はもっと生活感があ
るんだろうなぁ、って、少しエリが羨ましかった。
31 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:06:25.44 ID:wvRdY72E0
冬休みに入る前、クラスで大掃除があった。
まず机を廊下に出すんだけど、それぞれ机を廊下に持っていって
体の大きい男子が机を受け取って並べる、って感じに作業してた。
僕が男子に机を渡した途端、他の机よりも少し乱暴に音を立てて
置いて、他の人と顔を見合わせてクスクス笑ってた。なんかつら
かったけど、そんなの日常茶飯事なのでスルーしようとしたら、
エリの声が聞こえた。
「ちょっとうるさいんだけど、もうちょっと静かにおけないの?」
珍しくエリが怒っていた。
男子たちは「わりぃわりぃ」と言いながらニヤニヤしてた。
掃除が終わって机並べてた時、その男子から腹いせのように机の
角を蹴られた。こんどはエリが見てなかったけど、何故か気にな
らなくなった。エリが文句を言うことでそっちに矛先が向かうの
を恐れてたから少し安堵した。
32 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:13:27.80 ID:wvRdY72E0
冬休みの間もたまにエリとヤマオカくんは勉強しにきた。
ヤマオカくんがメアドを教えて欲しいって言ったのも冬休みの間
だ。メアドを登録するのはエリの他に幼馴染しかいなかったので
3人目だ。増えていくメモリがちょっと嬉しかった。
でもエリの勉強の調子はあまりよくなかった。
希望校に受かるかどうかは結構厳しい。でもエリはめげずにがん
ばっていた。
「もし落ちても勉強しなかった私が悪いから!でも大学はヤマオ
カくんと一緒に行きたいから、ちゃんと勉強は続けるよ、いまま
で以上に!」ポジティブだなぁ、と感心した。
33 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:18:31.39 ID:wvRdY72E0
正月が終わって始業式を明日に控えた、最後の冬休み。
エリと2人で勉強してた最中に兄弟…僕の双子の弟が帰ってきた。
その日は居間で勉強してたから鉢合わせしてしまった。
弟は露骨に嫌そうな顔をしたけど、エリは気にせず挨拶をしていた。
「あけましておめでとう!お邪魔してるよー」
「どうも。」
弟とエリは同じクラスになったことがあるけど、どうやら話すの
は はじめだったようで、少しぎこちない挨拶だった。
34 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:23:06.75 ID:wvRdY72E0
「弟くん、学校と家だと全然違うねー、
クールっていうの?ちよっとびっくりしちゃった」
エリは臆することなく弟に話しかける。
二卵性だから僕と全然似てない弟は学校では そこそこ友達もいた
し 成績も優秀だったから、劣等感しか抱いていなかった。家族と
いっても あんまり話すこともないから、家の中でガンガン話しか
けてくエリは ほんとうに凄いと思った。
この時 内心僕はびびってた。弟とどう接すればいいかわからなかっ
たから。たぶん弟も困惑してたと思う。
35 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:26:17.93 ID:wvRdY72E0
この時エリは「弟くんも一緒に勉強しようよ!」と持ちかけて、
僕は緊張で倒れてしまいそうだった。お世辞にも仲が良いとは言
い難い弟が快くオーケーすると思ってなかったからだ。
でも意外なことに弟は少し考えたあと、「いいよ」とオーケーし
た。意外すぎて弟はを凝視すると、少し嫌そうに眉を寄せて顔を
背けられたのが印象的だった。
36 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:32:26.56 ID:wvRdY72E0
勉強しようよ!と持ちかけたのはエリだったけど、勉強というよ
りも半分はエリの勉強を見守る回になっていた。
今回は僕より成績が良い弟がいたのでエリの面倒は主に弟が見て、
僕は自分の勉強を進めてた。弟のように進学校に行くつもりはな
かったから、正直そこまで勉強する必要もなかったんだけど、喋
るのが億劫だったので丁度よかった。
弟は次第に学校での調子を取り戻して仲良くエリと話してた。帰
り際にメアドを聞いていて、やっぱり僕と違うなぁと改めて認識
した。
37 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:33:29.02 ID:wvRdY72E0
頭がぼんやりしてるせいで誤字ばっかですね。
脳内で訂正してくれるとうれしいです、ごめんなさい。
気をつけよう…。
38 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:37:37.88 ID:wvRdY72E0
その日のメールで「やっぱ兄弟だから仲良くしないとね」とエリ
は言っていた。
「エリが仲良くすんの?」
「違うよ、哀川くんがだよ!あれから話した?」
「なんも話してない」
「えー…」
僕の家族があまり交流がないって薄々感じていたようで、エリは
僕と弟が仲良くなってほしそうにしていた。仲が悪いというより
も、お互いに干渉しないみたいな関係だったので、どうするべき
か悩んだ。
40 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:46:59.06 ID:wvRdY72E0
中学生活最後の新学期が始まった。
世間ではバレンタインがどうの言ってたけど、もう受験が目前に
迫ってるエリは「それどころじゃないよー!」と嘆いていた。
弟は相変わらず学校では僕を避けるようにして生活してたけど、
エリが家に来てる時は一緒に勉強するようになった。ヤマオカく
んも弟とも話すようになっていて、エリはエリでいつの間にか僕
たちの幼馴染(女)と友達になっていた。
幼馴染は奇抜なセンスが好きで、黙ってれば相当かわいい(学年で
もトップクラスに入るくらいモテてた)のに、裏原系にハマってい
たので孤立して動くことが多かった。
エリはスイーツ寄りの容姿だったので合わないと思ってたけど、
人ってよくわからないな、と思った。
そして僕を取り巻く環境が変わっていくんだなぁと、ぼんやり思っ
てた。
41 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:51:21.28 ID:wvRdY72E0
いままで人と関わることが、例え家族ですらなかったから、不思
議な気持ちになった。
なんとなくそれがエリのおかげだといのもわかってたので、僕は
僕で何か新しいことをやってみようと思った。
バレンタインが目前に迫っていたので、ネットで必死に作り方と
材料を調べて、当日の放課後僕の家で勉強する約束を取り付けた。
42 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:58:26.11 ID:wvRdY72E0
入試はバレンタイン終わってすぐだったからオーケーを貰った。
ラッピングは無理だったから、その場で渡すつもりだった。
ついでといっちゃあれだけど、ヤマオカくんや弟にもあげるつも
りだった。幼馴染もチョコだけもらうって言ってた。
当日。
作ったのはマフィンだったけど、美味しい美味しい!ってエリは
喜んでくれた。ヤマオカくんもありがとう、ってお礼言ってくれ
た。弟はなにも言わなかった。
43 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:05:57.32 ID:wvRdY72E0
受験当日。エリはヤマオカくんから貰ったお守りを握りしめなが
ら、「ただいまー!」と教室に帰ってきた。
僕は先に帰ってきてたので暖房のかかった教室でぬくぬくしてい
たけど、エリは鼻を真っ赤にしていた。
手応えはそこそこだと言っていたけど、正直きびしいだろうな、
と心の中で思った。
その日の夜、ヤマオカくんから「エリと答え合わせしたけど、結
構きびしい」というメールを貰った。やっぱり、と思った。
エリもたぶん気付いてて、鼻を真っ赤にしてたのは帰り道泣いて
たんだろう。他に鼻を赤くしてた人がいなかったから、たぶん、
間違いない。
44 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:12:18.16 ID:wvRdY72E0
二次試験も終わってホワイトデー。
夕方にエリが家を訪ねてきて、クッキーが入った包みを2つ渡し
てくれた。
「一つは弟くんのね。1人で全部食べちゃだめだよ?」
「弟呼ぼうか?」
「ううん、哀川くんから渡して!私はこれからヤマオカくんとデー
トですー」
ふざけながらエリが手を振ってエレベーターへ向かって行った。
渡すだけなんだから直接でもいいのに。そう思ったけど文句をい
うつもりもなかった。
45 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:17:30.47 ID:wvRdY72E0
弟に「エリから」といってクッキーを渡すとなんだか微妙そうな
顔をして受け取った。
それから何か言いたそうに「あー…」って少し唸って、ポケット
から小包を取り出して僕に差し出した。
「チョコ食べたから、一応」
中身はピンクのボールペンだった。
はじめて家族から贈り物をされたので嬉しかった。
ここでどうして僕という一人称を使ったのか自分でもわからないけど、
>>1は男じゃなくて女です。
なんとなくわかってた人もいるかもしれないけど。
もし男女の青春展開を期待してた人がいたらごめんなさい。
途中から一人称を変えるのも気が引けるので、そのまま続けます。
46 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:23:57.67 ID:wvRdY72E0
それから弟と家にいる時は少しだけ話すようになった。
たまに帰ってくる両親は相変わらず優秀な弟にしか関心がなくて、
交流以前の問題だったけど、エリやヤマオカくんがいてくれたか
ら前ほど気にすることはなくなった。
受験はエリは落ちていた。
結局 近くにある高校に通うことになり、僕もそこを滑り止めとし
て受けていたので、無理やりそこに通うことにした。
偏差値がどうのこうのより、エリと一緒の高校に通ったほうが新
しい発見ができると思ったからだ。
今思えば、いつのまにか相当依存してた。
>>次のページへ続く
当日。
エリは宣言通り彼氏さんと一緒にきた。
僕の家は両親が不在がちなので そういった心配はないけど、友達
をあげるってはじめての事だったので結構緊張した。
エリは どうやら彼氏と同じ高校(僕が予定してた高校よりもランク
がうえだった)に行きたいらしく、それで思い悩んでいたそうだ。
確かにエリは相当頭が悪かったから、納得してしまった。
彼氏のヤマオカ(仮名)くんは無口だったけど 冷たいというわけじゃ
なくて、喋るのが苦手なんだろうな、という印象だった。僕も無
口なほうだったけど、その分エリが賑やかだったのでちょうどよ
かった。
28 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:51:05.44 ID:wvRdY72E0
物覚えが悪いことは知ってたけど、その日のエリ熱心に覚えよう
としてた。ヤマオカくんも一生懸命わかりやすく言葉を選んでた。
その日から毎週土日のどっちかはエリ達が僕の家にきて勉強する
習慣ができた。たまに彼氏が予定あってエリが1人でくることもあっ
たけど、一応 僕の家も兄弟がいるので そこは毎回、変に緊張した。
肉親に友達見られるのも変な感じだった。僕は普段から見てるの
に。
29 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:56:38.55 ID:wvRdY72E0
その日、兄弟が出かけていたので居間で勉強してたらエリがそわ
そわして落ち着かない雰囲気だった。
「どうしたの?」
「うーん、なんか、落ち着かないなって。なんでだろう…」
きょろきょろしながらエリが答えを探す。
僕の家は両親が不在がちで、家を使う頻度も低めなので最低限の
家具しかなかった。小5の時に引っ越したのもあって、居間には食
卓、冷蔵庫、食器棚、テーブル、ソファ、テレビ、そして電話を
おく小さな棚くらいだった。
僕は見慣れてたけど、エリはそうでもなかったらしい。
「物が少なくて落ち着かない」とエリがこぼした。
30 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 05:59:16.95 ID:wvRdY72E0
そういえば僕の部屋に入った時も、机とベッドしかないのを見て
「ものが無いんだね」と言ってた。普通の家はもっと生活感があ
るんだろうなぁ、って、少しエリが羨ましかった。
31 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:06:25.44 ID:wvRdY72E0
冬休みに入る前、クラスで大掃除があった。
まず机を廊下に出すんだけど、それぞれ机を廊下に持っていって
体の大きい男子が机を受け取って並べる、って感じに作業してた。
僕が男子に机を渡した途端、他の机よりも少し乱暴に音を立てて
置いて、他の人と顔を見合わせてクスクス笑ってた。なんかつら
かったけど、そんなの日常茶飯事なのでスルーしようとしたら、
エリの声が聞こえた。
「ちょっとうるさいんだけど、もうちょっと静かにおけないの?」
珍しくエリが怒っていた。
男子たちは「わりぃわりぃ」と言いながらニヤニヤしてた。
掃除が終わって机並べてた時、その男子から腹いせのように机の
角を蹴られた。こんどはエリが見てなかったけど、何故か気にな
らなくなった。エリが文句を言うことでそっちに矛先が向かうの
を恐れてたから少し安堵した。
32 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:13:27.80 ID:wvRdY72E0
冬休みの間もたまにエリとヤマオカくんは勉強しにきた。
ヤマオカくんがメアドを教えて欲しいって言ったのも冬休みの間
だ。メアドを登録するのはエリの他に幼馴染しかいなかったので
3人目だ。増えていくメモリがちょっと嬉しかった。
でもエリの勉強の調子はあまりよくなかった。
希望校に受かるかどうかは結構厳しい。でもエリはめげずにがん
ばっていた。
「もし落ちても勉強しなかった私が悪いから!でも大学はヤマオ
カくんと一緒に行きたいから、ちゃんと勉強は続けるよ、いまま
で以上に!」ポジティブだなぁ、と感心した。
33 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:18:31.39 ID:wvRdY72E0
正月が終わって始業式を明日に控えた、最後の冬休み。
エリと2人で勉強してた最中に兄弟…僕の双子の弟が帰ってきた。
その日は居間で勉強してたから鉢合わせしてしまった。
弟は露骨に嫌そうな顔をしたけど、エリは気にせず挨拶をしていた。
「あけましておめでとう!お邪魔してるよー」
「どうも。」
弟とエリは同じクラスになったことがあるけど、どうやら話すの
は はじめだったようで、少しぎこちない挨拶だった。
34 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:23:06.75 ID:wvRdY72E0
「弟くん、学校と家だと全然違うねー、
クールっていうの?ちよっとびっくりしちゃった」
エリは臆することなく弟に話しかける。
二卵性だから僕と全然似てない弟は学校では そこそこ友達もいた
し 成績も優秀だったから、劣等感しか抱いていなかった。家族と
いっても あんまり話すこともないから、家の中でガンガン話しか
けてくエリは ほんとうに凄いと思った。
この時 内心僕はびびってた。弟とどう接すればいいかわからなかっ
たから。たぶん弟も困惑してたと思う。
35 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:26:17.93 ID:wvRdY72E0
この時エリは「弟くんも一緒に勉強しようよ!」と持ちかけて、
僕は緊張で倒れてしまいそうだった。お世辞にも仲が良いとは言
い難い弟が快くオーケーすると思ってなかったからだ。
でも意外なことに弟は少し考えたあと、「いいよ」とオーケーし
た。意外すぎて弟はを凝視すると、少し嫌そうに眉を寄せて顔を
背けられたのが印象的だった。
36 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:32:26.56 ID:wvRdY72E0
勉強しようよ!と持ちかけたのはエリだったけど、勉強というよ
りも半分はエリの勉強を見守る回になっていた。
今回は僕より成績が良い弟がいたのでエリの面倒は主に弟が見て、
僕は自分の勉強を進めてた。弟のように進学校に行くつもりはな
かったから、正直そこまで勉強する必要もなかったんだけど、喋
るのが億劫だったので丁度よかった。
弟は次第に学校での調子を取り戻して仲良くエリと話してた。帰
り際にメアドを聞いていて、やっぱり僕と違うなぁと改めて認識
した。
37 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:33:29.02 ID:wvRdY72E0
頭がぼんやりしてるせいで誤字ばっかですね。
脳内で訂正してくれるとうれしいです、ごめんなさい。
気をつけよう…。
38 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:37:37.88 ID:wvRdY72E0
その日のメールで「やっぱ兄弟だから仲良くしないとね」とエリ
は言っていた。
「エリが仲良くすんの?」
「違うよ、哀川くんがだよ!あれから話した?」
「なんも話してない」
「えー…」
僕の家族があまり交流がないって薄々感じていたようで、エリは
僕と弟が仲良くなってほしそうにしていた。仲が悪いというより
も、お互いに干渉しないみたいな関係だったので、どうするべき
か悩んだ。
40 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:46:59.06 ID:wvRdY72E0
中学生活最後の新学期が始まった。
世間ではバレンタインがどうの言ってたけど、もう受験が目前に
迫ってるエリは「それどころじゃないよー!」と嘆いていた。
弟は相変わらず学校では僕を避けるようにして生活してたけど、
エリが家に来てる時は一緒に勉強するようになった。ヤマオカく
んも弟とも話すようになっていて、エリはエリでいつの間にか僕
たちの幼馴染(女)と友達になっていた。
幼馴染は奇抜なセンスが好きで、黙ってれば相当かわいい(学年で
もトップクラスに入るくらいモテてた)のに、裏原系にハマってい
たので孤立して動くことが多かった。
エリはスイーツ寄りの容姿だったので合わないと思ってたけど、
人ってよくわからないな、と思った。
そして僕を取り巻く環境が変わっていくんだなぁと、ぼんやり思っ
てた。
41 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:51:21.28 ID:wvRdY72E0
いままで人と関わることが、例え家族ですらなかったから、不思
議な気持ちになった。
なんとなくそれがエリのおかげだといのもわかってたので、僕は
僕で何か新しいことをやってみようと思った。
バレンタインが目前に迫っていたので、ネットで必死に作り方と
材料を調べて、当日の放課後僕の家で勉強する約束を取り付けた。
42 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 06:58:26.11 ID:wvRdY72E0
入試はバレンタイン終わってすぐだったからオーケーを貰った。
ラッピングは無理だったから、その場で渡すつもりだった。
ついでといっちゃあれだけど、ヤマオカくんや弟にもあげるつも
りだった。幼馴染もチョコだけもらうって言ってた。
当日。
作ったのはマフィンだったけど、美味しい美味しい!ってエリは
喜んでくれた。ヤマオカくんもありがとう、ってお礼言ってくれ
た。弟はなにも言わなかった。
43 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:05:57.32 ID:wvRdY72E0
受験当日。エリはヤマオカくんから貰ったお守りを握りしめなが
ら、「ただいまー!」と教室に帰ってきた。
僕は先に帰ってきてたので暖房のかかった教室でぬくぬくしてい
たけど、エリは鼻を真っ赤にしていた。
手応えはそこそこだと言っていたけど、正直きびしいだろうな、
と心の中で思った。
その日の夜、ヤマオカくんから「エリと答え合わせしたけど、結
構きびしい」というメールを貰った。やっぱり、と思った。
エリもたぶん気付いてて、鼻を真っ赤にしてたのは帰り道泣いて
たんだろう。他に鼻を赤くしてた人がいなかったから、たぶん、
間違いない。
44 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:12:18.16 ID:wvRdY72E0
二次試験も終わってホワイトデー。
夕方にエリが家を訪ねてきて、クッキーが入った包みを2つ渡し
てくれた。
「一つは弟くんのね。1人で全部食べちゃだめだよ?」
「弟呼ぼうか?」
「ううん、哀川くんから渡して!私はこれからヤマオカくんとデー
トですー」
ふざけながらエリが手を振ってエレベーターへ向かって行った。
渡すだけなんだから直接でもいいのに。そう思ったけど文句をい
うつもりもなかった。
45 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:17:30.47 ID:wvRdY72E0
弟に「エリから」といってクッキーを渡すとなんだか微妙そうな
顔をして受け取った。
それから何か言いたそうに「あー…」って少し唸って、ポケット
から小包を取り出して僕に差し出した。
「チョコ食べたから、一応」
中身はピンクのボールペンだった。
はじめて家族から贈り物をされたので嬉しかった。
ここでどうして僕という一人称を使ったのか自分でもわからないけど、
>>1は男じゃなくて女です。
なんとなくわかってた人もいるかもしれないけど。
もし男女の青春展開を期待してた人がいたらごめんなさい。
途中から一人称を変えるのも気が引けるので、そのまま続けます。
46 :名も無き被検体774号+:2012/01/23(月) 07:23:57.67 ID:wvRdY72E0
それから弟と家にいる時は少しだけ話すようになった。
たまに帰ってくる両親は相変わらず優秀な弟にしか関心がなくて、
交流以前の問題だったけど、エリやヤマオカくんがいてくれたか
ら前ほど気にすることはなくなった。
受験はエリは落ちていた。
結局 近くにある高校に通うことになり、僕もそこを滑り止めとし
て受けていたので、無理やりそこに通うことにした。
偏差値がどうのこうのより、エリと一緒の高校に通ったほうが新
しい発見ができると思ったからだ。
今思えば、いつのまにか相当依存してた。
>>次のページへ続く